アドバイスを見る前にぜひアンケートに回答を

遺伝子検査のメリットは、結果を病気の予防に活かせる点だと前頁で述べた。しかし、どのように生活習慣を改善すればよいのか、より具体的に知りたいところだ。MYCODEでは、「運動・生活」「栄養素」「食品・食料」という3つの観点から、検査結果に応じた、生活習慣改善へのアドバイスが提供される。

筆者の場合であれば、喫煙が10個の疾患に関わっている(実際、吸っている)。当然、禁煙をしたほうが健康的にはベターなわけだが、そう簡単に禁煙できるものではない。これに対し「コーヒーを控えて紅茶やお茶にする」「熱いお茶や冷たい水を飲む」「禁煙開始から2週間は外での飲酒は控える」など、吸いたい気持ちを抑えるための具体的なメソッドが示される。また、禁煙に準備するための心得や、開始後の禁煙日記の付け方なども提示されるほか、禁煙に関するエピソードを持つ著名人のインタビューを読むことも可能だ。

また、生活習慣に関するアンケートに答えておくと、生活改善アドバイスが自分の生活習慣を踏まえたものになるので、より効果的なアドバイスを得るためにアンケートに答えることをおすすめする。

生活改善のためのさまざまなアドバイスも提供される

このほか、検査結果のページから「発症を予防するもの・促進するもの」をクリックすると、主だった疾患の発症予防や発症促進に関係する要因が色分けされたリストを見ることができるので、そちらも参考にしよう。

「発症を予防するもの・促進するもの」一覧

麦芽の香りが感じにくい体質だったとは…

冒頭でご紹介したように、「MYCODE」では疾患の発症リスクのほかに遺伝的な体質についても知ることができる。尿酸値、骨密度からそばかすのできやすさまで、その内容は多岐にわたるので疾患の発症リスクとともに生活改善に役立てることができる。一方、中にはやけにピンポイントな項目もある。以下では全130の体質項目中から筆者が「こんなこともわかるの?」と驚いた項目をピックアップしてご紹介する。

「体質項目」の検査結果

・麦芽の香りを感じとる能力
ビールの原料である麦芽の芳しい香りは、麦芽を焙煎したり麦汁を発酵させたりする過程で化学反応が起こり、60種類もの成分が混じり合うことで生み出されているという。この香りを感じ取る能力は、実は遺伝的素因によって、ある程度左右されているのだそうだ。筆者は「麦芽の香りを感じにくいタイプ」と判定され、ほぼ毎日晩酌を楽しんでいる身としては少々ショッキングな結果に…

・アスパラガスの代謝産物の臭いを感じ取る能力
「アスパラガスを食べると尿が臭う」といわれることがあるが、これは、体内でアスパラガスの成分が消化酵素に分解されるときにできる化学物質メタンチオールが尿中に排出され、臭いを発するためと考えられてる。臭いの元となる成分を尿に排出する能力は、遺伝的に一部の人にしかないと考えられていた。しかし、実際には「一部の人の尿が臭う」のではなく、「一部の人が尿の臭いを嗅ぎ分けることができる」という嗅覚の問題であり、遺伝的な要因によって左右されることが近年明らかになってきた。

・頸動脈の血管壁の厚さ
頸動脈は心臓につながった大動脈から脳へと血液を送る血管で、気管の両脇を走っている。血管は内膜、中膜、外膜の3層構造になっているが、内膜と外膜を合わせて1.1mm以上だと動脈硬化と診断される。頸動脈の硬化は全身の動脈硬化を反映しているといわれており、動脈硬化になると、脳梗塞や心筋梗塞、大動脈瘤などを引き起こすリスクが高まる。動脈硬化は遺伝的要因も関係しているとされる。

・苦味(PROP)の感じやすさ
苦味の指標となる「プロピルチオウラシル(PROP)」と呼ばれる物質の感じやすさも、遺伝的な要因の影響を受けるとされており、PROPを感じるタンパク質に関わる遺伝子が苦味の感受性を決めていることが判明している。苦味の感じ方は食生活や健康にも影響することが分かってきている。

・乳歯から永久歯への生え変わりの早さ
永久歯は6歳頃から徐々に出てきて、初めに乳歯の奥に出てくる第一大臼歯や、中切歯と呼ばれる中央の前歯から生え変わり、12~13歳くらいにかけて28本の永久歯がそろう。一方、第3大臼歯(親知らず)だけは出てくる時期が異なり、通常18~24歳頃に生えてくる。乳歯から永久歯への生え変わりの時期は、遺伝子の影響を受けることが知られている。ちなみに、日本人では約94%の人が「乳歯から永久歯への生え変わりがやや早いタイプ」で、「乳歯から永久歯への生え変わりが遅いタイプ」は0.1%しかいない。

受けるだけでは意味が無い

以上が遺伝子検査「MYCODE」の大まかな内容だ。初めての遺伝子検査だったので、検査結果を見るときは若干ドキドキしたが、前述したように自分が今まで知らなかった病気の発症リスクを知ることができて良かったと素直に感じる。

ただ、注意しなくてはならないのは、例えば「もやもや病」が平均より4.03倍発症しやすくても、それが必ず発症するわけではないということ。なので、仮に何か重大な疾患の発症リスクが高いと判定されても気落ちせずに、「だったらどうすれば発症する確率を低くできるのか」という思考に切り替えないと、せっかく遺伝子を調べてもその意義が半減してしまう。もちろん、普段の食生活や住環境など、環境要因も病気には大きく関わることも忘れてはならない。

自分でさえ知らなかった部分を明らかにしてくれる「MYCODE」は、受けることに意味があるのではなく、検査結果を見て何かを変えるきっかけとし、生活改善の方針を決めるのに役立てることが重要なのだ。