東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(東京医科歯科大)、両大学発のベンチャー企業であるリバーフィールドの3者は7月31日、空気圧駆動型内視鏡ホルダーロボット「EMARO」を開発し、8月より販売を開始すると発表した。価格は1500万円(税別)で、3年間で100台の販売を目指す。なお、販売はホギメティカルを通じて行う。

空気圧駆動型内視鏡ホルダーロボット「EMARO」

「EMARO」は、東工大精密工学研究所の只野耕太郎 准教授と、東京医科歯科大生体材料工学研究所の川嶋健嗣 教授の研究成果を活かして開発された内視鏡手術支援ロボット。執刀医が頭部に装着したジャイロセンサーによって、執刀医の頭の動き検知し、頭の動きに合わせて内視鏡を空気圧で動かすことができる。空気圧駆動は、動きが柔らかく滑らかで、安全性が高いということに加え、直径約10mmの小さなシリンダーへの空気の出し入れだけで大きな出力を得ることができるため、装置の大幅な小型化・軽量化を図ることができるというメリットがある。

動く自由度は、内視鏡の抜き差し(前後)、上下、左右、回転の4つがあり、頭部の動きに加えて足元のスイッチで操作を行う。高度な精密制御が求められる手術関連のロボットの動作を空気圧で制御することは困難とされていていたが、東工大の香川利春 教授の流体計測制御技術研究をベースに、只野准教授と川嶋教授が空気圧駆動系の厳密なモデル化と独自の制御技術を導入したことで精密な空気圧制御を実現した。

執刀医が頭に装着したジャイロセンサー(左)と連動して内視鏡が動く

足元のスイッチ

内視鏡ホルダー部分

内視鏡手術は患者に負担が少ない手術として普及が進んでいるが、従来の方式では、助手が執刀医の指示に従って内視鏡を操作するため、コミュニケーション面や手ぶれの発生などが問題となっており、「EMARO」はこうした課題を解決するロボットとして期待されている。また、「EMARO」を用いることで、医師不足で助手の確保が難しい中小規模の病院でも内視鏡手術が行えるようになる。

「EMARO」の特長

従来の内視鏡手術と、「EMARO」を使った内視鏡手術の比較

手術支援ロボットの市場についてリバーフィールドの原口大輔社長は「(規模は)現在世界で5000億円。毎年2-3割のペースで拡大し、2030年には10兆円市場に達する見通し」とし、成長市場である事を強調。現在、海外展開を視野に入れた新しい手術支援ロボットを開発中で、2017~2018年に「EMARO」の次世代機を、2019年に空気圧駆動型のロボット鉗子システムを上市する予定だ。

ロボット鉗子システムの開発状況

今後の計画