科学技術基本計画の下で今年度に重点的に取り組むべき項⽬を明示した「科学技術イノベーション総合戦略2015」が、19日の閣議で決まった。

総合戦略2015は、科学技術イノベーションの創出に必要な政策分野として「イノベーションの連鎖を生み出す環境の整備」と「経済・社会的課題の解決に向けた重要な取り組み」の二つを設定している。

環境整備が必要とされたのは、「若⼿・⼥性の挑戦の機会の拡⼤」、「⼤学改⾰と研究資金改革の⼀体的推進」、「学術研究・基礎研究の強化」、「研究開発法⼈の機能強化」、「中⼩・中堅・ベンチャー企業の挑戦の機会の拡⼤」。女性参画を促進するために、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実現する支援策と共に、科学技術イノベーションへの参入を目指す女性のロールモデルとなる女性リーダーの登用促進が重点的取り組みに盛り込まれた。

大学・研究資金改革では、競争的資金について2016年度以降の新規採択から、原則、間接経費を30%措置するなど大学の要望に応える一方、寄付金収入の拡大、民間との共同研究・受託研究の拡大など、財源の多様化を通じた自律的な経営を国立大学に求めている。

学術・基礎研究の強化では、イノベーションの創出につながるオープンサイエンスの世界的な流れに適切に対応していくことも重要、とした。

経済・社会的課題の解決に向けた重要な取り組みとしては、「再⽣可能エネルギーの⼤幅導⼊と安定電⼒供給の両⽴のための地球環境予測と情報統合化」、「再⽣医療、オーダーメイド・ゲノム医療の実現、がん、精神・神経疾患、新興・再興感染症、難病に関する研究の推進」、「予防・予測・避難復旧対応技術を組み合わせた災害関連情報共有化による⾃然災害に対する強靱(きょうじん)な社会の実現」などが盛り込まれた。

また、「IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ等を駆使した新産業の育成」として、「自動⾛⾏技術による次世代都市交通システムや地域コミュニティ移動⼿段」や「インダストリー4.0を超える⾼付加価値製品・サービスを迅速に提供する新たなものづくりシステム」などの新しい産業が挙げられた。

さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、「おもてなしシステム」も重点的に取り組む新産業に盛り込まれた。継続的に訪日客を増加させ、地域経済の活性化に寄与する多言語音声翻訳などが含まれている。

前日の18日に開かれた総合科学技術・イノベーション会議でも、「科学技術イノベーション総合戦略2015」は議題となった。安倍首相は科学技術イノベーション政策を一層強力に推進していく意思を表明すると同時に、「ここ10年、若手をはじめとした研究現場は疲弊し、わが国の研究力は相対的に劣後してきている」と現状に対する厳しい認識も示している。

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