東京医科歯科大学は3月17日、扁平メダカを解析し、重量下で潰れない3次元臓器の形成に関わる遺伝子を特定したと発表した。
同成果は英バース大学の古谷-清木誠 博士の研究グループとオーストリア IST のハイゼンベルグ 博士、東京医科歯科大学難治疾患研究所発生再生生物学分野の仁科博史 教授ら、大阪大学、慶応大学、広島大学、名古屋大学、英オックスフォード大学、米ウイスコンシン大学の共同研究によるもの。3月17日付けの国際科学誌「Nature」に掲載された。
生物を構成するさまざまな組織は整然と配置されることで機能する臓器を形成するが、生物がどのように重力に抵抗して身体の形作りをするのかはこれまで謎とされていた。例えば、ヒトの眼球はレンズがカップ型をした網膜の中心に配置されることで機能するが、レンズや網膜組織が独自の3次元構造を取り、正しく配置するメカニズムは解明されていない。
今回の研究では、体全体が扁平になるメダカ変異体を解析した。解析の結果、細胞内で遺伝情報の読み取りを調節する分子YAPの変異が原因であることが判明。YAPタンパク質が消失すると、細胞張力が低下し、重力に抵抗できなくなり、3次元構造をとる組織が崩壊することが明らかとなった。
この結果により、YAPが細胞骨格アクトミオシンネットワークの重合・脱重合を調節する遺伝子の発現調節を通じて、細胞張力を制御する仕組みが存在することがわかった。さらに、組織・臓器を正しく配置できないのは、細胞張力が低下したことで、接着の働きをする細胞外基質フィブロネクチ ンに異常が生じるためであることも突き止めた。この細胞張力制御メカニズムは、ヒトでも同様であることが確認され、脊椎動物の臓器形成に共通したメカニズムであると考えられるという。
現在、iPS細胞を目的細胞に分化誘導する研究が推進されているが、立体的な組織や臓器を作ることは未だ困難な状況にある。今回の研究成果は、細胞張力制御の観点からこの問題解決の糸口となることが期待される。