東京都・三越前「COREDO 室町1」5階の日本橋三井ホールにて、デジタルアートで美食を表現する企画展「食べるアート展 L’art de Rosanjin ―魯山人と新・美食倶楽部―」が開催されている。会期は3月24日まで。開催時間は平日・土日祝ともに11:00~23:00。入場料は大人 1,000円、学生800円、小学生以下600円。(※飲食提供は別途要費用)。

展覧会入り口には巨大なのれん。これは、魯山人が愛した星岡茶寮にかけるのれんを作っていた「築地津多屋」が製作したもの

同展は、画家や陶芸家、書道家など多彩な顔を持ちつつ、美食家としても名を馳せた北大路魯山人の文脈を紐解き、日本の美食をテーマに和食の世界を体験型アートで表現するイベント。2013年7月~9月にかけてパリ・ギメ東洋美術館で開催された「魯山人の美―日本料理の天才」が基となっており、同展では複数のコンテンツを追加。日本の"美食"を象徴する高級料亭や寿司店、天ぷら店をデジタルアートで疑似体験し、一部店舗の料理をその場で食べられるという内容になっている。

現存する魯山人の「器」を元にした、幅2メートルの巨大模型(左)、実際の器(右)

会席料理×プロジェクションマッピング

会場で大きな存在感を示しているのは、会席料理をプロジェクションマッピングで表現した「季節の食卓プロジェクション」。食卓の上には真っ白な器が提供される順番に置かれており、それぞれの器の前に鑑賞者が立つと、魯山人の器と一流料亭「紀尾井町 福田家」の会席料理が映像で投影される。

最初に器、その次に料理、最後にテーブルセッティングと料理の説明が映し出される流れになっているため、鑑賞者は会席料理に込められた意味を知り、同時に器の色柄などを鑑賞できる仕掛けになっている。また、「紀尾井町 福田家」の料理は日時限定(3月21日、22日/昼の時間帯を予定/1,800円)で提供されるため、目で楽しんだ料理を作り出した料亭の技を、実際に食べて楽しむこともできる。

天ぷらの名店を疑似体験

「季節の食卓プロジェクション」の隣に設置されているのは、明治18年創業の高級天ぷら店「日本橋てん茂」のもてなしを映像と音で体験できるコンテンツ「美食音響カウンター」。同店の調理・提供の様子を収めた映像を用いたプロジェクションマッピングで、揚げたての天ぷらを一品ずつカウンター越しで提供される様子を視覚と聴覚で体感できる。臨場感のある映像と音のため、本当に天ぷらを目の前に出されたかのように錯覚する瞬間もあり、周囲の鑑賞者も臨場感に驚いていた。

魯山人ゆかりの高級寿司や「鴨」を堪能

映像で料理を楽しんだ後は、実際に魯山人が愛した"美食"の粋を、比較的手頃な価格で食べることもできる。

高級寿司の代名詞として知られる銀座久兵衛の今田洋輔代表取締役は、幼少期に魯山人と実際に交流を持った人物。そんな同店の寿司職人が夜の時間帯の会場(18:00~21:00)に出張し、江戸前寿司の代表的なネタである「こはだ」と「まぐろのづけ」のセット(1,800円)がで提供されている。

銀座久兵衛の寿司2巻セット

松嶋啓介シェフによる「鴨胸肉の真空調理 三種の味で」

また、フランスで魯山人が鴨料理を現地の方式ではなくわさび醤油で食べたというエピソードから着想を得た一品「鴨胸肉の真空調理 三種の味で」も提供されている(11:00~23:00提供/1,300円)。キューブ状に切り分けた鴨肉の上に、エピソードにも登場するわさびのほか3種類の味付けが施されている。これは、28歳でフランスにおける外国人最年少のミシュラン一つ星を獲得した松嶋啓介シェフによるものだ。

総じてプロジェクションマッピングの精度は高く、日本の誇る和食の粋を疑似体験することができる内容となっていた。仕事や学校帰りに立ち寄るのにちょうどいい展示ボリュームとなっていたので、興味のある人は足を運んでみてほしい。