Carlos Ghosn氏

3月5日までスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2015」で、日産自動車の社長兼CEOおよびRenaultのCEOを務めるCarlos Ghosn氏が登場し、自動運転カーをはじめとした自動車産業の展望を語った。日産は2016年にも初代の自動走行カーを発売する予定で、その後も段階的に進化させていくという。

MWCはモバイル業界のイベントだが、自動車も"コネクテッドカー"としてネット対応が進んでいる。また電気自動車(EV)など技術革新が進んでいる。Ghosn氏がMWCでスピーチするのは初めて。同氏の登場は、自動車業界にもインターネットと無線通信技術がもたらす変化の波が押し寄せていることを印象付けた。

Ghosn氏はまず、立ち上がりはじめた市場であるEVについて語った。

日産のEV販売台数は約250万台に達している。これは他社のEV販売台数の合計を上回る台数となる。「利用者の満足度は非常に高い」とGhosn氏は述べつつも、今後マス普及を加速するにあたって障害となっていることを、1)チャージ、2)航続距離、3)価格とした。これらについては積極的に取り組んでおり、将来的に解決に向かうとの見通しを示した。

EVの次となるのが、自動走行カーだ。といっても、Googleが開発しているような無人運転カーではない。運転手は引き続きシートに座っているが、時にハンドルから手を離すことができるという意味での自動運転となる。「われわれ自動車業界が取り組んでいるのは自動で走行できる車であり、運転手がいない無人カーではない。運転手はおり、これまで以上に車をコントロールができる」とGhosn氏。路上のアクシデントの90%が人間の運転ミスによるものであり、「人間のアクションに制限を設ければ、事故の比率は下がり、運転がもっと快適になる」と続けた。さらには、若者などコンシューマーのトレンドにも共鳴するものだという。

「自動運転カーは大きいものだ。これは現実のものであり、われわれ自身を変革するものになるだろう」(Ghosn氏)。

まずは渋滞時の自動運転から

Ghosn氏によると、日産とRenaultは自動運転カーに段階的に取り組むという。まずは2016年、交通渋滞時に自動走行する車を投入するという。運転手は渋滞時にハンドルから手を離すことができ、前方を見続ける必要がないというものだ。「技術的には準備ができている」とGhosn氏。あとは規制の承認などの問題を解決するのみだという。

第2弾は2018年だ。ここでは高速道路で自動走行を可能にする。車線変更も可能とのことだ。

その次は2020年で、市街地での自動走行が実現する。この段階になると、「かなり複雑になる」とGhosn氏。車が周囲を認識して意思決定をするが、「2つの対立する方法があるとき、どうやって判断するのか―赤信号で車は停止しているが、後ろから猛スピードで車がやってくる―そのまま信号を待つのか、赤信号を無視するのか」と例を挙げた。

最終的には無人カーが実現するだろうとGhosn氏は述べるが、それは「10年以上先だろう」と予想する。もちろん、技術的なハードルが高いためだ。合わせて挙げたのが、「サイバーセキュリティ問題」だ。このようなことから、規制当局は無人カーをなかなか認めないだろうとの見通しを示した。

規制は自動車業界にとって重要だ。「規制が市場を決める―技術の方向性を決定づけることがままある」とGhosn氏は述べる。例としてディーゼルカーをあげる。ディーゼルを長期的にサポートしてきた欧州では販売される車の50%以上がディーゼルだが米国では1%以下、日本でも同様に低いという。またEVについても、米国で最もよく売れているアトランタでは、税率が低く、どこでも駐車できるなどメリットが多いという。

シェアという点でみると日産とRenaultは世界第4位。だがGhosn氏は、自動車業界全体の成長は当面緩やかであり、売上面での成長よりも技術革新が重要になるとの見解を示す。