3Dプリンタ、世界や現場ではどう使われている?

続いて「3Dプリンターブームの実際と、少し先の未来」と題した講演を行ったのは、ケイズデザインラボの原雄司氏だ。3Dプリンタに関する著作も多くある原氏は、自身を「3Dプリンタの人ではない」と紹介。メディア報道の熱は急激に盛り上がった後で冷めたかのように見えるが、実際のものづくりの現場には3Dプリンタやスキャナ、切削加工機といったものがしっかりと根付きつつあることを語った。

ケイズデザインラボ 原雄司氏

3Dプリンタを使って作られたものとして、アメリカのLocal Motorsが発表した実際に走ることのできる車のボディや、中国での建造物といったものを紹介。「日本だとすぐに公道が走れるのかだとか、こんなものに住みたいのかというような話になるが、3D技術の可能性を示すには、魅力的で面白い事例だと思う」とCES(1月に開催されたアメリカ最大の家電見本市)で見た最新の3Dプリント事例を交えて、いろいろなシーンでのいろいろなシーンでの活用の可能性について原氏は語った。

自身が経験した事例としては、フルデジタルでのシボ加工を施す「D3テクスチャー」について紹介した。プラスチック成形品に独特の模様をつけるシボ加工は、金型を製作し、材料に型押しする形で成形する。この金型製作は職人が薬品加工などで行うため、デザイナーの思う形状を出せるまでに何度もやり直す必要が出ることが多かったという。

「3Dデータ上でテクスチャを施し、3Dプリンタを使って試作を行うことで、デザイナーが思った通りのシボを作れるようになった。実際、関係者全員で意匠確認を行いながら作ることができ、早期段階で手戻りのない3Dデータを作成。これを元に精密金属加工を行ったことで、金型やり直しゼロを実現した」と原氏。この技術で2012年東京都ベンチャー技術対象の奨励賞を受賞している。

3D加工を活かして作った金型を利用したデジタルシボ「D3テクスチャー」

さらに原氏は、2010年に制作されたFabLabの動画と現在の状況を比較して、現状が過去の予測とそれほど離れていないことなどを紹介。「今後はBtoB、BtoCというのではなく、BtoI、individualの時代になる。IoTとBtoIを組み合わせた世界も予見させられるようになってきている」とも語った。

無料ベンチマークを受けられる「3D相談会」も実施

両講演ともに多くの質問が飛び交い、講演終了後も登壇者は参加者に囲まれて質問を受けていた。参加者の質問は、実際に使った場合にどうなるのか、今後の法整備はどういう方向へ向かっているのかなど、具体的なものが多く、3Dプリンタや切削加工機を使ったものづくりがより身近なものとなりつつあることが感じられた。

多くの参加者が熱心に聞き入り、質問も活発に行われた

また、当日は「3D相談会」として、予約制で3Dプリンタや切削加工機の特徴やメリットについて詳細な説明を受けられる機会もあった。ここでは各機種のベンチマークを無料で受けることもできた。導入を具体的に考えている企業にとって貴重な機会となったはずだ。

「3D相談会」では無料ベンチマークを含めて具体的な導入相談を実施

「monoFab Experience Day2」は東京を皮切りに、大阪、福岡、名古屋と各都市で開催されている。同社ではこのような形でユーザーや3Dプリンタ、切削加工機導入を検討する企業が参加できるイベントを頻繁に開催している。情報収集の場や、導入相談の場を求める企業にはぜひ注目して欲しい。