GSユアサは11月17日、従来のリチウムイオン電池用電極材料に比べて、8倍の容量をもつ正極材料として硫黄-多孔性カーボン複合体、および高い容量をもつシリコン系負極材料を備える次世代リチウム2次電池の放電に成功したと発表した。

今回の高いエネルギー密度は、硫黄を含む正極の高容量化技術により実現した。硫黄は、低コスト、資源的に豊富、および無害であることに加え、1675mAh g-1の高い理論容量をもつことから、次世代リチウム2次電池の正極材料として期待されている。しかし、硫黄が絶縁体のため、その電極反応における硫黄の利用率が低い結果、期待される高容量を得ることが困難という問題を有している。これまで、この問題に対して、多孔性カーボン担体の孔中に硫黄を充填することで、硫黄に良好な電子伝導性を付与する技術が提案されてきたが、その孔径が大きく、不均一なことから、硫黄の分散性が低くなり、硫黄への十分な電子伝導が付与されない結果、正極材料質量あたりの容量は800mAh g-1以下にとどまっていた。

今回、ナノオーダーの均一な細孔をもつ多孔性カーボンの孔に硫黄を充填することによって、1000mAh g-1を上回る容量をもつ硫黄-多孔性カーボン複合体の合成に成功したという。さらに、反応中間体(多硫化物)が電解液へ溶解・拡散するという硫黄のもう1つの問題の解決のために有効な技術の開発に成功し適用することで、この硫黄-多孔性カーボン複合体電極の容量低下を大幅に抑制したとしている。

これらにより、同電池の放電特性から、正負極材料質量あたりのエネルギー密度が、従来のリチウムイオン電池のものに比べて3倍あることがわかった。今後は、シリコン系負極の耐久性能を高めたのちに、この電池の実用化に向けた技術開発を進め、2020年のサンプル出荷を目指すとコメントしている。

硫黄-多孔性カーボン複合体正極およびシリコン系負極を備える電池(電極面積:12cm2)の外観写真と放電特性

硫黄-多孔性カーボン複合体正極の放電特性。正極の放電特性を明確にするために、ここでは放電電位の安定した金属リチウムを負極に使用している

硫黄-多孔性カーボン複合体正極の充放電サイクル特性。正極の充放電サイクル特性を明確にするために、ここでは放電電位の安定した金属リチウムを負極に使用している