SFDRを制限する可能性のあるADCアーキテクチャにはどのようなものがありますか?

1GSPS以上までサンプリングを行ういくつかのADCは、十分な高速データレートを実現するために、2つ以上の個別のチャンネルまたはコアを持つインターリービング方式を採用しています。たとえば、インターリービングを使用することによって、サンプル・アクイジション・プロセスを通じ各コアが順番に動作するデュアルチャンネルADCを使用して、必要なサンプル・レートを実現することができます。1つのチャンネルがサンプリングを行っている間、もう1つはまだ前のサンプルの処理を続けます。インターリーブ・アーキテクチャでは、3つ以上のADCコアを使用することもあります。

インターリーブ法を使用すれば複数のADCコアを並列で使用できるため、シングル・コアで実現できるサンプル・レートよりも高いサンプル・レートを実現できます。しかし、これらの各コアの間には、その位相、オフセット、ゲイン、帯域幅のわずかな違いが存在します。結果としてインターリービング・アーティファクトとイメージ・スプリアスが新たに周波数スペクトル内に生じ、そのためにADCの広帯域SFDRが減少します。これはシステムのダイナミック・レンジを減少させ、インターリービング・スプリアスと微弱な対象信号を識別する能力を低下させます。システム・エンジニアは、インターリーブADCに見られるアーティファクトを軽減するために、特別校正モードやスプリアスに関するプランニングの方法について、詳細なアプリケーション・ノートを参照する必要があります。

処理コアが1つだけのモノリシックADCアーキテクチャでは、インターリービング・スプリアスは見られません。シングル・パイプライン・コアADCは、比較的広いSFDRを備えた広帯域コンバータの一例で、通常は第2または第3高調波の制限を受けます。

インターリービングADCは周波数ドメインではどのような性能を示しますか?

3つの個別インターリーブ・コアで構成されるサンプリング・アーキテクチャでは、2つのゲインおよび位相イメージ・スプリアスと、1つのオフセット・スプリアスがあります(図5)。オフセット・スプリアスは「2/3×ナイキスト周波数」の位置に見られますが、この場合はSFDRに影響する支配的な要素ではありません。SFDRを制限するゲイン・スプリアスと位相スプリアスは、「2/3×ナイキスト周波数±アナログ入力周波数」の位置にあります。

図5 このFFTは、インターリーブ・システム・ボードに使われている3つの個別ADCを示しています。対応するインターリービング・スプリアス・アーチファクトは、第2高調波(-85dBFS)の場合と比較してSFDRを-8dBc減少させます

システムのSFDRに影響する支配的な要素は、振幅の最も大きいスプリアスです。インターリービング・スプリアスがなければ、SFDRは基本周波数から第2高調波までのダイナミック・レンジになります。この例では、インターリービング・イメージ・スプリアスのためにSFDR性能が-8dB低下します。

4つの個別インターリーブ・コアで構成されるサンプリング・アーキテクチャでは、3つのゲインおよび位相イメージ・スプリアスと、2つのオフセット・スプリアスがあります(図6)。ナイキスト周波数と「1/2×ナイキスト周波数」の位置にオフセット・スプリアスがあり、「ナイキスト周波数-アナログ入力周波数」の位置にもうひとつのイメージ・スプリアスがありますが、この場合、これらはSFDRに影響する支配的な要素ではありません。決定的要素であるゲイン・スプリアスと位相スプリアスは、「1/2×ナイキスト周波数±アナログ入力周波数」の位置にあります。

図6 このFFTは、インターリーブ・システム・ボードに使われている4つの個別ADCを示したものです。SFDRに影響を及ぼす対応イメージ・スプリアス・アーチファクトは「1/2×ナイキスト周波数±アナログ入力周波数」の位置にあり、これは第3高調波(-84dBFS)の場合と比較してSFDRを-13dBc減少させます

これらのスプリアスが第2または第3高調波よりも大きい場合は、システムのSFDRに影響する支配的な要素となります。インターリービング・スプリアスがなければ、SFDRは基本周波数から第3高調波までのダイナミック・レンジになります。この例では、インターリービング・イメージ・スプリアスのためにSFDR性能が-13dB低下します。