NTTは10月6日、シリコントランジスタ中に存在する電荷の閉じ込め状態であるトラップ準位を介した単電子転送(電子を1つずつ正確に運ぶ技術)の高速化に成功したと発表した。

詳細は、英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

今回、NTT 物性科学基礎研究所は、シリコントランジスタ中に存在する極めて微細な閉じ込め領域を持つトラップ準位を利用した、最高動作周波数3.5GHzの高速単電子転送(測定温度17K)に成功した。この単電子転送のエラー率は、電流計で計測可能な最小レベルとなる10-3以下だったという。この高速でのエラー率は、現在研究が進められている単電子転送素子の中でも極めて低い値であり、さらに、理論的予測では絶対温度10~20K、周波数1GHzでエラー率が10-8以下(電流標準としての目標値)になることが見込まれ、高い転送精度を持っている可能性も示されたとしている。

同技術により、1つの方向に正確に転送された電子の流れは、精度の高い電流として取り出せるため、近年提案された電流の基本単位であるアンペアの再定義に繋がる高精度な電流源(電流標準)への応用が期待される。さらに、従来の精度を凌駕する高精度化を図ることで新しいSI単位系での電流の高精度化を実現すると、電気標準分野・計測産業分野に貢献すると考えられるとコメントしている。

利用した素子構造と測定方法