東北大学は9月5日、ジグザグ型エッジを有するグラフェンの作製に成功したと発表した。

同成果は、同大 多学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)のPatrick Han助教、一杉太郎准教授らによるもの。AIMRの浅尾直樹教授、P. S. Weiss教授、赤木和人准教授と共同で行われた。詳細は、米国科学誌「ACS Nano」に近日掲載される予定。

グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に並んだ厚さ原子1層分の物質で、電子移動度が高いため、透明導電膜や超高速トランジスタなどの応用に向けて、活発な研究が展開されている。その中でも、ナノスケールサイズで細線(リボン)状のグラフェンナノリボンは、エッジの形状がジグザグ型かアームチェア型かで、電気伝導性や磁性などの物性が大きく異なると言われている。しかし、ジグザグ型のエッジの作製はきわめて難しく、2種類のエッジを作り分けることができないため、未だに物性の違いを検証することができていない。

研究グループでは、分子の合成によってエッジ制御を行うため、二臭化ビアントラセン化合物という分子を銅基板上にばらまき、500℃で10分程度基板を保った。その後、原子1つ1つが識別可能な走査型トンネル顕微鏡を活用して生成する分子を観察すると、ジグザグ型のエッジを有するグラフェンナノリボンが生成していることを確認できたという。

今回の成果によって、グラフェンのエッジの形状による物性の違いを検証するなどの研究を進めることが可能となり、グラフェンを使った新規エレクトロニクスデバイスやスピントロニクスデバイスの創製につながることが期待されるとコメントしている。

(左)グラフェンナノリボンの走査トンネル顕微鏡像と(右)ジグザグ型エッジの拡大図