モバイル関連アプリについて

これまでにもデバイスの進歩に沿った開発について言及してきた同社だが、そのノウハウが具体化したのがこの発表だろう。iPad用アプリの「Adobe Sketch」と「Adobe Line」、「Photoshop Mix」という3種のモバイル関連アプリが発表された。そして、SketchやLineと組み合わせて使うハードウエアとして、ペンツール「Adobe Ink」と電子定規の「Adobe Slide」が発表された。ソフトウェアを展開している同社が手がけるハードウェアとして注目を集めている「Adobe Sketch」と「Adobe Line」は、現時点では北米のみでの発売、国内発売は年末頃の予定だという。

・Adobe Sketch

Adobe Sketch

Sketchは、Inkや指で描画できるデジタルスケッチブックアプリ。デジタルペン「Ink」による描画デモでは、2,000以上のステップ数で感知し、紙質も描写できるというInkの鉛筆タッチ、細かい線も早いレスポンスで描けるペンタッチなどが披露された。筆の太さや色を変更できるほか、色が交わった箇所では水彩風のブレンド感も表現されていた。そうしたアナログ作画の感覚を再現する一方で、デジタルならではのアンドゥ、スライドバーを用いた過去履歴へのジャンプも可能となっている。

また、同アプリ立ち上げ時に表示される「Behance」では世界中のアーティストの作品の観賞やフォロー、リアクションができるほか、自分のキャンバスを公開したりフィードバックをもらうこともできる。

・Adobe line

Adobe line

「Adobe line」は、パース図やシェイプのライブラリを持つ、直線に着目したiPad用製図アプリ。手描きはもちろんのこと、デジタルツール「Ink」&「Slide」と組み合わせればより美しい表現ができるツールだ。デモでは、Slideを置くと直線定規のガイドが出る様子や、Inkでなぞると終点にスマートグリッドが表示され線が美しく繋げられる様子が披露された。

さらに、画面上のボタンをタップすれば三角や円、雲形などの定規が使い分けられるほか、ピンチアウトによるサイズ変更やタッチスライドによる平行線描画などボタンやジェスチャーの組み合わせでさまざまな線が表現できるようになっている。パース描画ツールや遠近のグリッド、消失点の切り替え、スタンプパックのモチーフなどを活用すれば、インテリアパースや建築図面なども効率よく作成できるだろう。

また、Ink本体のボタンからは、メニューやカラーテーマの呼び出しのほかパレットの読み込みが可能。ボタンを押しながら作品をタップするとキャプチャクリップされ、クラウドクリップボードに入れれば別のiPadやデバイスで呼び出して張りつけることも可能。

なお、アプリ「Skecth」および「Line」は無償でダウンロードできる。InkとSlideの発売は今年度中だが、アプリの感触を確かめたいユーザーは、Adonitから発売中の感圧式スタイラスペン「Jot Touch with Pixelpoint」で同様の機能が体験できるということだ。

・Adobe Photoshop Mix

Adobe Photoshop Mix

PhotoshopとLightroomの機能をいかした無償のレタッチアプリ。PhotoshopやLightroom Mobileのカタログデータ、Facebookの写真ライブラリの画像に対し、ボタンからスライダに変わるUIが珍しい光量や明度などの基本調整、一部にだけ色を残せる「スマート」などのプリセットフィルタによるレタッチなどが行える。非破壊編集のためいつでも元の状態や任意の段階に戻ることが可能だ。

Adobe Photoshop Mixでの「コンテンツに応じる」機能の実演

またPhotoshopへの送信やカメラロールへの保存、Behanceでの公開、ソーシャルサービスでの共有など、さまざまな出力方法も用意されている。クラウド経由でアップライトやコンテンツに応じた塗り、手ブレ補正の軽減などPhotoshopやLightroomの強力な機能を利用できるとのこと。

これら3種類のアプリは今後Creative SDKとして公開する予定だという。西山正一氏は「現在はPrivate Beta版だが、公開後にはサードパーティによる開発や搭載を期待したい」と語っていた。こうしたデスクトップとモバイル、ソーシャルの強力な連携は今後も続きそうだ。

制作環境とCC導入の不安解消

イベントの終盤には、最新のCC導入に対する不安を軽減するキーマンとして、大日本スクリーン、共同印刷、グラフィック、キンコーズから担当者が登壇し、各社の対応状況などを解説した。版下作成のRIPを開発、販売するする大日本スクリーンでは、「出力の手引きWeb」や「EQUIOS/Trueflouの手引き」などでCC2014のサポート開始を伝えているほか、入稿時の注意点や安全なPDF/X-4入稿などの情報を公開しているとのこと。ネット印刷通販のグラフィックも、PDF入稿のメリットや入稿データをクラウドでチェックできる「PDF入稿Pro」サービスなどを紹介した。発表会前日にはキンコーズがCC出力対応を開始。現在のCC出力対応店は517社/588店となったことも併せて報告された。

大日本スクリーン、共同印刷、グラフィック、キンコーズから担当者が登壇

クレイグ・ティーゲル氏

そして、イベントの最後を締めくくったのは同社取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏。基調講演やデモ、プレゼンから得たCCの最新イノベーションの面白さや素晴らしさを体験してほしいと挨拶し、約2時間半の発表会をまとめた。

「最新デバイスと標準規格」、「パフォーマンス」、「生産性」、「アドビマジック」という4つのコアが凝縮されたCCの新機能と最新のツール群。すでに利用可能なもの、今後順次追加されるものと時期はいろいろだが、クリエイティブの可能性を今以上に広げてくれることは間違いないだろう。