三井記念美術館、朝日新聞社は、近年、注目を集めている明治の工芸のなかでも、超絶技巧による作品を紹介する「超絶技巧! 明治工芸の粋ー村田コレクション一挙公開ー」を開催している。開催期間は7月13日まで、会場は東京都・日本橋の三井記念美術館。開催時間は10:00~17:00、入場料は一般1,300円、70歳以上1,000円、大学・高校生800円、中学生以下は無料。このあと、静岡(佐野美術館、10月4日~12月23日)、山口(山口県立美術館、2015年2月21日~4月12日)にも巡回する。

【七宝】並河靖之《花文飾り壺》清水三年坂美術館蔵

【自在】明珍《蛇》清水三年坂美術館蔵

同展は、村田理如(まさゆき)氏が収集した京都・清水三年坂美術館の所蔵品のうち、近年注目されている"明治の工芸"、なかでも超絶技巧による精緻を極めた作品を紹介。並河靖之(なみかわやすゆき)らの七宝、正阿弥勝義(しょうあみかつよし)らの金工、柴田是真(しばたぜしん)らの漆工、そのほか技巧を凝らした印籠や刺繍絵画など、約160点もの作品がまとめて出展されるのは初となる。

また、単なる金工の置物のように見える「自在」は、複数の金属製のパーツをつなぎ合わせることで各部を自由自在に動かすことができ、動物や昆虫、魚などの複雑な動きが再現されている。江戸時代、甲冑師によって創始され、甲冑の需要が激減した江戸末期以降に隆盛を迎え、欧米諸国でも賞賛されている。

さらに、白い材質をそのまま生かすことの多い「牙彫(げちょう)」の世界で、彩色を駆使した、究極にリアルな竹の子や茄子などの作品を制作した安藤緑山に注目し、特設コーナーが設けられている。安藤は、弟子もとらず、一切の記録を残さなかったため、技法はもちろん、生没年すらはっきりわかっていない謎の人物とされている。

【牙彫】安藤緑山《竹の子、梅》清水三年坂美術館蔵

【刺繍絵画】西村總左衛門、千總《豹に鸚鵡図》清水三年坂美術館蔵

なお、村田理如氏は1980年代後半、出張で訪れたニューヨークのアンティークショップで購入した印籠がきっかけで、明治工芸と出会う。47歳で当時、専務を務めていた村田製作所を辞め、明治工芸の収集に邁進することを決意。2000年には「清水三年坂美術館」を設立し、現在は約1万点を超す作品が所蔵されている。今回の展示作品の多くは、万国博覧会などを通じて輸出され、長らく海外のコレクターが所蔵していたが、村田氏がオークションなどを通じて買い戻したものだ。