Analog Devices(ADI)は6月13日、同社のDSP「Blackfin」として、ビルオートメーションやセキュリティ、医療機器などの分野における高性能化ニーズに対応できる新たなコアを搭載した「ADSP-BF70xシリーズ」を発表した。

同シリーズは、14年間におよぶBlackfinシリーズの歴史において、初めてコアを「Blackfinコア」から、新開発の「Blackfin+」に置き換えたもの。新コアは、従来の16ビットの固定小数点積和演算に対応しつつ、新たに32ビットの固定症終点の積和演算を1サイクルでできるように32ビットMACと72ビットALUが追加されたほか、16ビットの複素数演算もできるようになった。32ビット演算では最大400MHz(100MHz/200MHz/300MHz/400MHz)で動作し、400MMACS(16ビットでは800MMACS)の演算性能を提供する。

BF70xシリーズは既存のBF51xシリーズの領域を置き換えることを中心の目的として開発された製品群となっており、52xの領域もカバーできる性能を実現しているという

データ演算ユニットは従来、2個の16ビットMAC、2個の40ビットALU、4個の8ビット・ビデオALU、1個のバレル・シフタで構成されていたが、Blackfin+ではこれに1個の32ビットMACと1個の72ビットALUが追加された形となっている。ちなみに採用しているプロセスは40nm LPだという

ターゲットとする分野としてはオーディオやビデオ処理分野としており、そうした分野で必要となるメモリ容量に対応するため、パリティ有りの132KB L1 SRAMキャッシュに加え、最大1MBのL2 SRAM(128KB/256KB/512KB/1MB)、ならびにオプションとして512KB L2 ROMが搭載されるほか、外部メモリとして、16ビットLPDDRもしくはDDR2 SDRAMにも対応する製品もラインアップしている。

各種の周辺インタフェースも統合しており、USBやCAN、SD/SDHC/SDXCなどのメディア関連もサポートしている

コアの消費電力は400MHz時で95mWで、従来コア比で35%の消費電力削減となっているという

また、セキュリティIP保護として、オンチップの暗号化アクセラレータも搭載しており、暗号や復号、認証といった作業も可能となるため、プロセッサ上で動作させるソフトウェアIPの保護やネットワーク上でやりとりされるデータの保護、プロセッサに対する外部からの不正アクセスに対する保護などが可能となる。

性能としては、同社が確認した範囲で、従来コア比で32ビットベンチマークにおいてFIRおよびIIRフィルタリングが2~3倍向上したほか、複素数演算では16ビットCFFTベンチマークで30%向上を確認したとする。また、CPUやマイコンなどにおける一般的なベンチマークソフトにおけるCPUコアの評価項目でも20%の性能向上を確認したという。

同社では、同シリーズの提供に合わせて、開発環境も提供する。コンパイラとしては、従来より提供をしている「CrossCore Embedded Studio」の最新バージョン1.1.0にて対応しているほか、最上位品となる「ADSP-BF707(400MHz動作、1MB L2 SRAM、外部DRAMサポート)」を搭載した「ADSP-BF707 EZ-KIT-Lite開発ボード」も299ドルで提供される。同開発ボードには新たなUSBベースのJTAGエミュレータ「ADZS-ICE-1000」が同梱(別途購入の場合は150ドル)されており、これを使って開発を行うこととなる。また、さらにより詳細なデバッグなどが可能なJTAGエミュレータ「ADZS-ICE-2000」も提供され、こちらは1495ドルで提供されるという。

DSPだけではなく、周辺の開発環境も併せて提供される

なお、同シリーズの単価は1000個受注時で3.99ドル~10ドルとしており、最上位となる「ADSP-BF707」および、BF707から外部メモリサポートおよび4ch 12ビットA/Dコンバータなどが省かれた「ADSP-BF706」は即日サンプル出荷を開始しているという。また量産出荷は2015年第3四半期を予定しているという。

BF70xシリーズとしては8製品が提供される。いずれも1コア品

左上がBF707を搭載した開発評価ボード。右が高性能JTAGエミュレータ「ADZS-ICE-2000」、左下が開発評価ボードにも同梱されるJTAGエミュレータ「ADZS-ICE-1000」

開発プラットフォームとしてはBF70xを搭載した低消費電力イメージング・プラットフォーム「BLIP(Blackfin Low-power Image-processing Platform)」も提供される。こちらは背面にカメラモジュール、下に三脚モジュールを搭載しており、監視カメラなどの評価を簡単に行える作りとなっている