産業技術総合研究所(産総研)は5月20日、自動車用部材や太陽光発電用部材などさまざまな用途に使用される有機ケイ素材料の原料として有望なテトラアルコキシシランを、効率的に製造する技術を開発したと発表した。
同成果は、同所 触媒化学融合研究センター 触媒固定化設計チームの深谷訓久研究チーム付、崔準哲主任研究員、安田弘之研究チーム長、佐藤一彦研究センター長らによるもの。詳細は、5月22~23日に東京国際フォーラムにて開催される「第3回JACI/GSCシンポジウム」で発表される。
テトラアルコキシシランは、高純度合成シリカや電子デバイス用の保護膜、絶縁膜の原料などとして有用である。また、工業的には、天然のケイ石(シリカが主成分)を出発原料に、大量の電気エネルギーを用いて高温で炭素と反応させることで、いったん金属ケイ素に還元したのち、これを塩素と反応させて四塩化ケイ素とし、さらにアルコールと反応させる方法、もしくは金属ケイ素を直接アルコールと反応させる方法により製造されている。しかし、いずれの方法も、高温を要する金属ケイ素の製造過程を経るため、典型的なエネルギー多消費なプロセスとなっている。また、これが金属ケイ素から製造されるテトラアルコキシシランなど、さまざまなケイ素原料のコスト高の一因ともなっている。
今回、シリカ(純度:99.7%以上、粒子径:75~150µm)とメタノールとの反応に、脱水剤としてアセトンジメチルアセタールという有機物を加えると、反応温度242℃、反応時間24時間で、テトラメトキシシランが18%の収率(シリカ基準)で得られることがわかった。また、反応系に二酸化炭素を共存させ、さらに触媒として金属アルコキシドとアルカリ金属水酸化物を少量添加すると、反応が高効率化したという。
今回開発した技術により、シリカとアルコールという安価でありふれた原料から、ケイ素化学産業の基幹原料であるテトラアルコキシシランを高効率で合成できるようになった。同プロセスは、金属ケイ素を経由しないので、有機ケイ素原料の省エネルギー・低コスト製造に繋がり、今後の有機ケイ素材料の利用拡大が期待される。
今後は、有機脱水剤や触媒を改良することで、反応のさらなる効率化を図っていく。また、多様なケイ素源やアルコール種への適用性について検証を行うとともに、有機脱水剤の再生や触媒のリサイクルについての検討を進め、テトラアルコキシシランの現行製造法に対するコスト優位性を評価するとともに、スケールアップ検討も実施し、数年後の実用化を目指す。さらに、今回の技術で製造されるテトラアルコキシシランから、シリコーンなどの有機ケイ素部材の製造に用いられる様々な有機ケイ素原料を製造する反応プロセスや、それに必要となる触媒の開発を進めるとコメントしている。