トヨタ自動車、デンソー、豊田中央研究所(豊田中研)の3者は5月20日、次世代半導体のSiCを用いたハイブリッド車(HV)向けパワー半導体を開発したことを発表した。

自動車における半導体の使用量は年々増加傾向にあり、高級車になればなるほど、その傾向は顕著となる。そのため、半導体、特にパワー半導体の電力の損失を防ぐことは低消費電力化を図れ、最終的に燃費の向上につながる

同半導体は、HVなどのモーター駆動力を制御するパワーコントロールユニット(PCU)にシリコン半導体を置き換える素子として搭載されるもの。実際に3者が開発したSiCダイオード/トランジスタをPCUに採用し、HVの試作車に搭載してテストコースで走行実験を行った結果、5%以上の燃費向上を達成できることを確認したとする。

SiCの特長。シリコンに比べてスイッチング損失が小さく高周波駆動が可能

トヨタらが開発したSiCパワー半導体の試作ウェハ

トヨタらが開発したSiCパワー半導体2種類のチップ画像

すでに同社は電子制御装置や半導体などの研究開発および生産の拠点である広瀬工場内に、SiC専用の半導体開発のためのクリーンルームを2013年12月に整備しており、今後、さらなる効率化を進め、将来的には10%の燃費向上を目指すとするほか、発熱を抑えられることに加え、コイルやコンデンサの小型化なども可能なため、PCUの体積を現行型に比べて1/5に縮小することを目指すとしている。

広瀬工場の半導体開発・生産エリア

シリコンパワー半導体比でSiCパワー半導体の採用で燃費10%向上を目指す

また、パワーモジュールの高性能化や耐熱性の向上などによる冷却機構の簡素化などにより、PCUのサイズを現行型比で1/5にすることを目指すとする

なお同社では、今後1年以内にSiCパワー半導体を用いたPCUを搭載したHV試作車の公道での走行実験を開始する計画であるとしている。