イーソルは5月13日、組み込みシステム向けメニーコアプロセッサ対応リアルタイムOS「eSOL eMCOS」が、64コア上でも動作したことを確認したと発表した。

超微細手術用の医療機器や、コンピュータビジョン技術を利用する工場用ロボットや半導体製造装置など、高解像度の画像を扱うプロ用ビデオ機器、クラウドサービスを提供するネットワーク機器といった高次元のプロセッサ性能を必要とする分野で、メニーコアプロセッサの活用が始まっている。しかし、シングルコアおよび4コア程度までのマルチコアプロセッサ向けの従来のリアルタイムOSは、キャッシュコヒーレンシ機構を前提に、1つのカーネルがOSサービスを提供するアーキテクチャのため、事実上メニーコアプロセッサでは利用できない。「eMCOS」では、こうした限界を克服する新しいOSアーキテクチャを採用、商用メニーコアプロセッサに対応したリアルタイムOSとなっている。

「eMCOS」が採用する「分散マイクロカーネルアーキテクチャ」では、コア間通信を含むメッセージング、コアローカルスケジューリング、スレッド管理などの基本サービスを提供するマイクロカーネルが、コアごとに配置される。一方、ファイルサービスやネットワークなどのミドルウェアやデバイスドライバといったより高度なOSサービスは、マイクロカーネルとは独立したサーバスレッドとして複数のコアに分散して配置される。この仕組みにより、キャッシュコヒーレンシ機構を持たないメニーコアプロセッサでも、OSの複数コア間の共有データを少なくでき、コア数が増えてもスケーラブルなシステム性能が提供される。さらに、スケジューリングアルゴリズム「セミプライオリティベーススケジューリング」により、メニーコアで期待される高いパフォーマンスとスケーラビリティに加え、組み込みシステムに不可欠なリアルタイム性の両立を実現。そして、「eMCOS」のアプリケーションプログラミングモデルは「eT-Kernel Multi-Core Edition」などのマルチコアOSと同様に、CPUコアを意識する必要はない。この他、OSのAPIは、通常のC言語関数インタフェースで提供される。APIで利用するメッセージングなどの仕組みはその内部で隠蔽されて動作するため、その挙動を意識する必要がない。「eMCOS」は、POSIXとT-KernelのAPIをサポートしている。

また、アプリケーションの開発は、各メニーコアプロセッサ標準のEclipseベースの統合開発環境と、それにプラグインして利用する現在開発中の「eSOL eMCOS IDE Plug-in」が利用できる。「eMCOS IDE Plug-in」には、「eMCOS」に特化した各種システム解析ツールやユーティリティが含まれる。今後、「eMCOS」および「IDE Plug-in」に加え、ネットワークプロトコル、ファイルシステム、USBスタックを含むミドルウェアを統合化した「eSOL eMCOS SDK」として提供される予定。