富士フイルムは5月1日、挿入性と処置性能を高め、独自の画像センサ「スーパーCCD ハニカム」による高画質を実現した下部消化管用処置用スコープ「EC-580RD/M」を、富士フイルムメディカルを通じて発売したと発表した。価格は340万円(税別)。

近年、早期がんの処置には、内視鏡と処置具を用いて粘膜下層を切開・剥離する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)など患者の負担が少ない治療が注目されており、その症例数は年々増加傾向にある。同社は、これまでにディスポーザブル高周波ナイフ「FlushKnife」などのESD処置具を発売してきた。

今回の下部消化管用処置用スコープ「EC-580RD/M」は、高い挿入性・処置性能と高画質を兼ね備えており、従来機では12.8mmだった軟性部外径を10.5mmに細径化した。また、全長が長く、屈曲部が多い大腸に挿入する内視鏡には、患者の苦痛を抑えるための細さと軟らかさが求められる一方、医師による操作の微妙な力加減を伝えるために、ある程度の硬さも必要とされている。そこで、手元から先端に向かって連続的に軟らかさを変化させることで、手元側の力が先端部に伝わりやすくし、挿入性を向上させている。

また、処置中は処置する部位を明瞭にするために、ウォータージェットノズルから出した水や消化管内の粘液などの吸引、処置具の出し入れを鉗子口から何度も繰り返す。同製品は、細径化しながらも鉗子口径3.2mmを確保し、処置具の出し入れを容易にするとともに、高い吸引性能を両立させている。さらに、ウォータージェットノズルと鉗子口の配置を工夫し、目的部位への送水と処置具での処置を必要最小限の動作で切り替えることができる。加えて、内視鏡先端部の湾曲角210度を実現。小回り・旋廻性能に優れているため、大腸内にある輪状ひだの裏側など観察しにくい部位の観察が容易になる。これにより、増加傾向にある内視鏡下手術において検査時間を短縮し、医師のストレス軽減や患者への負担軽減に寄与するとしている。

この他、独自の画像センサ「スーパーCCD ハニカム」と、カメラレンズの設計で培った歪みの少ないレンズを搭載する他、ノイズ低減技術を活かすことで、解像度が高く歪みが少ない画像を提供する。そして、分光画像処理機能「FICE」との併用により、病変部と正常部の境界の視認性を向上させることも期待できるので、処置用途としてだけでなく、さまざまな内視鏡検査にも活用できる。

(左)下部消化管用処置用スコープ「EC-580RD/M」、(中央)先端部、(右)先端部拡大