東北大学と東京大学(東大)は4月23日、グラフェンの"質量ゼロ"電子を反映した超高速の状態を直接観察することに成功したと発表した。
同成果は、東北大学 電気通信研究所 情報デバイス研究部門の吹留博一准教授、東京大学 物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター(LASORセンター)の松田巌准教授らによるもの。詳細は、「Applied Physics Letters」に掲載された。
グラフェンは、ダイヤモンドと同じ炭素原子から構成されているが、その構造も性質も全く異なる。グラフェンとは、炭素が蜂の巣状に並んだ2次元の単原子シートであり、電気を通す性質がある。この性質の背景には、電気を伝導する電子の質量がゼロであるという特異な電子状態が存在し、近年、これを利用したデバイス開発が精力的に進められている。しかし、グラフェンの"質量ゼロ"電子を反映した超高速の電子状態は、これまで直接確認されたことがなかった。
今回、研究グループは、高次高調波真空紫外線レーザを用いた時間・角度分解光電子分光測定によって、この単原子層グラフェン特有の性質で、電子の質量がゼロに相当する状態である"質量ゼロ"を直接観測することに成功した。さらに、この成果から、質量ゼロの電子の振る舞いが、1つの光子に対して複数の伝導電子が発生するグラフェン特有の光応答現象に対応することも分かったという。
グラフェンを用いた次世代の光学デバイス開発では、この"質量ゼロ"電子を反映した超高速の状態を前提にしている。今回の研究により、その状態の存在が裏付けられ、さらにその特性評価が行われた。特に、グラフェンは原子レベルの構造体として微小素子となる特徴もあるので、光通信やレーザなどの光学技術の分野にて注目されている。今回の研究で得られたデータは、今後の開発に重要な役割を果たすと期待されるとコメントしている。