鉄道総合技術研究所(鉄道総研)と古河電気工業(古河電工)は3月10日、古河電工の子会社のスーパーパワーが製造した第2世代高温超電導線材を用いた大型フライホイール用高温超電導マグネットを開発したと発表した。

フライホイール蓄電システムは、装置の内部にある大型の円盤(フライホイール)を、太陽光発電などの余剰電力を使って回転させることで蓄電し、曇天により発電量が減少した際に、その減少分を補填するように発電するものである。劣化のない"電池"として使用でき、用途は幅広く、例えば鉄道システムの電力有効利用(回生失効対策)などにも役立つという。

開発を行っている次世代フライホイール蓄電システムは、鉄道総研が考案した超電導バルク体と超電導マグネットを組み合わせた超電導磁気軸受を適用したもので、回転する円盤を非接触で浮上させ、軸受の摩擦損失をゼロとすることで運転効率の向上を図っている。また、定期的に交換が必要だった軸受の寿命を半永久にすることができる。

現在開発中の超電導磁気軸受は、超電導バルク体と超電導マグネットで構成され、超電導マグネットで発生する磁場に対する超電導バルク体の反磁性効果により、1組の軸受で約4tの円盤を浮上させることを目標としている。このような大きな重量を浮上させるためには、高強度な超電導マグネットに高磁場を発生させる必要がある。また、効率の良い運用のために、冷却温度を上げる必要もある。そこで今回、この超電導マグネットに使用するコイルを、古河電工の子会社スーパーパワーの第2世代高温超電導線材を用いて、中部電力が開発した「よろい」コイル構造の内径120mm、外径260mmのダブルパンケーキコイルにした。

この製作したコイルを、小型冷凍機を用いた液体窒素を使わない熱伝導による冷却で、51K(-222℃)に保持して、運転電流である110Aでの通電と磁場を確認し、さらに線材の性能限界の163Aの通電に成功した。また、超電導バルク体との組み合わせ試験を実施し、2tを超える所期の浮上力が出ていること、強度的にも問題がないことを確認した。これまでの第1世代高温超電導線材は、高磁場を発生させるために20K(-253℃)以下まで冷やさなければならなかったが、第2世代高温超電導線材では、50K(-223℃)の温度で運転することが可能となり、冷却コストを低減するめどが立った。今後は、さらにコイルを追加して、実規模のフライホイールの浮上試験を行うとしている。

なお、同プロジェクトは、鉄道総研が古河電工、クボテック、ミラプロ、山梨県企業局を取りまとめて開発を進めている。超電導磁気軸受については、鉄道総研と古河電工が共同で開発を行い、鉄道総研が超電導磁気軸受全体の基本設計を実施し、古河電工が高温超電導マグネットの設計・製作を実施した。今後、同マグネットを2012~2014年度にかけて開発を進めている大容量超電導フライホイール蓄電装置の中に組み込み、山梨県米倉山に新設されるメガソーラーとの連系試験を2015年に開始する予定。

開発した高温超電導マグネットに用いるコイル