サラヴィオ化粧品は、毛包再生医療に向け、発毛調節機構の概念「マイクロセンサ理論」を発展させることで、「毛乳頭細胞」の一次繊毛の新しい役割を発見することに成功したと発表した。
同成果は、同社 中央研究所の松島一幸氏、末松実佳氏、御筆千絵氏、加世田国与士氏らによるもの。詳細は、「第13回 日本再生医療学会総会」にて発表された。
毛髪のヘアサイクル(成長期-退行期-休止期)は、毛包細胞間のシグナル伝達(細胞増殖因子などのやりとり)によって支配されており、その発毛サイクルの司令塔と言われる「毛乳頭細胞」はヘアケア研究の中心的存在として位置づけられてきた。
これまでの研究から同社は毛乳頭細胞の一次繊毛が毛母細胞(毛髪のもと)や線維芽細胞(毛髪の土台)の増殖に関わるという「マイクロセンサ理論」を提唱してきたが、今回の研究では、毛乳頭細胞が集まるとできる細胞塊(スフェロイド)「スフェロイド型毛乳頭細胞」では、毛包形成が誘導され、一次繊毛が長くなり、マイクロセンサとしての機能が高まる事が確認されたという。
具体的には、アセチル化チューブリン(繊毛マーカー)の免疫染色・蛍光顕微鏡観察により、培養毛乳頭細胞における一次繊毛の存在を確認したほか、走査型電子顕微鏡を用いて、細胞表面から突き出ている一次繊毛の姿を明確に捉えることに成功したという。また、一次繊毛の高分解画像解析により、繊毛長を解析(2.2±0.7μm)。リチウムイオンを加えることで、繊毛長を約3倍伸ばすことが可能であることを見出したほか、繊毛形成に必須の遺伝子の発現を抑制することで、一次繊毛をほぼ消失させることにも成功したことから、これにより毛乳頭細胞の一次繊毛を介したシグナル伝達機構の解明に道が開けたという。
さらに、繊毛長を伸ばした毛乳頭細胞の培養上澄み液に、ケラチノサイト(毛母細胞)の細胞増殖活性を確認。これは、一次繊毛の伸長に依存して細胞増殖シグナルが放出され、ケラチノサイトの細胞分裂活性を促進したことを示唆するものだとする加えて、同様に一次繊毛を伸長させ、さらにDHT(男性ホルモン代謝物)を加えた毛乳頭細胞の培養上澄み液にて、線維芽細胞の細胞増殖活性を確認したほか、繊毛形成を阻害したところ、線維芽細胞の増殖が抑制できることを確認。これにより、一次繊毛が線維芽細胞の増殖シグナル放出機構に関与していることが示唆されたとする。
これらの結果を受けて、一次繊毛の長さを制御する生体因子の探索を実施したところ、毛乳頭細胞の一次繊毛の伸長因子として、細胞増殖活性や細胞内情報伝達経路に関わる内在性のホルモン「bFGF」が一次繊毛と関係していることが判明した。
また、併せて毛乳頭スフェロイドの機能解析として、毛乳頭細胞をスフェロイドにすることで、一次繊毛の伸長が起こることを発見(3.7±1.1μm)。これを受けて、単層培養の毛乳頭細胞とスフェロイド培養の毛乳頭細胞を準備し、それぞれの培養上清による線維芽細胞の細胞増殖活性の比較を実施したところ、特に細胞数が少ない場合において、スフェロイド型毛乳頭細胞の培養上清による細胞増殖活性が認められたとのことで、この結果から、毛乳頭細胞がスフェロイドを形成すると一次繊毛の機能が高まり、より効率の良い細胞間情報伝達を行うことが示唆されたとする。
なお同社では新規天然成分の探索、機能解析、またそれらを用いた商品の開発を進めており、独自開発の加水分解酵母エキスが、毛乳頭細胞の一次繊毛を伸長する外因性の因子であることを突き止めたとしており、実際に同エキスが細胞内エネルギー産生装置であるミトコンドリアにどのような影響を及ぼすのかを調査したところ、原料の添加により、毛乳頭細胞内の線維状ミトコンドリア(運動活性が高い)の割合が増えることが判明したほか、同エキスがケラチノサイト(毛母細胞:毛髪のもとになる細胞)の増殖を促進するFGF-10の増加を引き起こすことも確認したとのことで、今後、さらにシグナル伝達機構の詳細を明確にし、発毛機構の網羅的理解を目指すことで、毛包や皮膚の再生医療につながる技術、商品開発を進めていく方針としている。