オムロンは2月20日、ダイオード部だけでなく、インバータ回路のスイッチング部にもSiCを採用した次世代パワーコンディショナを開発したと発表した。
今回の試作品は、出力容量5.5kWで小型、軽量、高効率化をコンセプトとし、新デバイス、新部品、新主回路方式、新放熱構造という4つの切り口で開発したという。具体的には、市場投入時に必要とされるJET認証相当レベルまで検証済みで、熱やノイズ性能をクリアし、系統連系運転状態という条件下で、効率が97.3%(5.5kW出力時の効率、DC330V入力時)で、従来機種の1/2の電力損失を達成。さらに、サイズも550mm×280mm×195mm(密閉筐体)と、従来機種の1/2の体積を実現した。
また、パワコンの昇圧回路とインバータ回路のダイオード部だけでなく、インバータ回路のスイッチング部にもSiCを採用している。従来のパワコンのスイッチング部は、スイッチング素子を内蔵したパワーモジュールを搭載する場合が多いが、ディスクリート品(部品レベル)を使用することで原価コストを抑え、高効率化との両立を実現している。さらに、スイッチング周波数の高周波化し、リアクトルなどの周辺部品を小型化した。この高周波化により"キーン"という不快な動作音も可聴域を超え、人間の耳には全く聞こえない静音設計も実現した。
そして、リアクトルで使われるコア材(磁性体)は、効率のみを重視する場合は高価な部品が採用されているが、同試作品では効率とコストの両立を意識した低損失のコア材料を採用した。加えて、昇圧回路にインターリーブ方式、インバータ回路に3レベルインバータ方式を採用することにより、さらなる小型・高効率化を図った。また、パワー回路系基板を1枚とし、不要な配線損失の削減するとともに組立コストも最小化した。この他、ベース部のアルミダイキャスト化を採用し、高効率な放熱性も実現した。
今回の試作品は、研究開発や試作機レベルではなく、製品化を見据え原価コストを抑えて開発したもので、半導体素子SiCが適正価格になればすぐに市場投入できる。従来品の屋外パワコン「KP55M」の筐体そのままで出力容量を約2倍の9.9kWに変更することも可能である。また、放熱構造の改善による密閉式のため、これまで屋内で制限されていた湿度の高い場所などにも導入可能で、設置場所を選ばない。これらにより、屋内外の住宅、低圧ミドル市場、さらには沿岸部などの塩害地域向けといった市場動向に応じて、2015年度中の販売を目指すと説明している。