早稲田大学(早大)は2月4日、「超音波診断ロボット」(画像)を利用し、遠隔地からの妊婦への超音波診断を想定した実証実験を1月29日に実施したことをと発表した。

成果は、早大ら理工学術院の岩田浩康准教授の研究チームによるもの。今回の実証実験は、神奈川県の取り組みである生活支援ロボットの実用化を通じた地域の安全・安心の実現を目指す「さがみロボット産業特区」の一環として行われた。

超音波診断ロボット

これまでも遠隔地からの妊婦への健診は検討されていたが、遠隔用の健診機材の重さなど、妊婦への安全面が課題であったため実用化されていなかった。しかし今回、妊婦の背部に背板を設置し、ワンタッチで上下動できる支柱で背板とロボット本体を接続する構造を取り入れたことで、エコー映像の取得に要する接触力以外の荷重が腹部にかからなくなり、妊婦の身体への負担を低減できるようになったロボットが披露された。

実証実験当日は、超音波に対して人体に似た特性を持つ素材に装着したロボット本体を配置した実験場所(神奈川県産業技術センター・海老名市)と、超音波胎児診断に実績のある医師がいる遠隔地にある病院(神奈川県立こども医療センター・横浜市)とを通信で接続。その上で、映像・音声・ロボットへのコマンドを双方でやりとりしながら、遠隔健診に向けて改良すべき課題が明確化されていった。

今後の課題は、医師側からリアルタイムで行われるタッチパネル操作により細かい動作が必要とされるため、「医師側の慣れ」が必要な点と、またリアルタイムの操作に対して画像が少し遅れて配信されるので、通信技術のさらなる進歩が望まれる点だ。

岩田准教授は「私自身が神奈川出身であること、そして首都圏における緊急の妊婦健診にかかる時間を縮めたいという想いがきっかけで、今回の研究を行っています。いずれは僻地や在宅診察など、さまざまな遠隔地での診療に活かせればと感じ、日々研究しています」とコメントとしている。