岡山大学は12月6日、日本の高齢者における「Type D気質」と呼ばれる性格・気質の調査を実施し、その結果、日本人高齢者では男女ともに、Type D気質があると、心理的な苦痛を4倍以上感じやすく、自分が不健康だと2倍以上に感じやすくなることが示唆されたと発表した。
同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科の葛西洋介大学院生(疫学・衛生学分野)、同 鈴木越治 助教、同 岩瀬敏秀 助教(地域医療人材育成講座)、同 土居弘幸 教授、同 高尾総司 講師らによるもの。詳細は米国のオンライン科学雑誌「PLoS ONE」に掲載された。
Type D気質は、「negative affectivity(否定的な感情や視点、考えを抱きやすい傾向)」と「social inhibition(他者からの否認や非難などを恐れるため、否定的な感情を表現できない傾向)」を併せ持った気質で、欧米を中心として、心血管疾患やメタボリックシンドロームなどの身体疾患、うつ病やPTSD といった精神疾患にかかりやすいという研究が報告されてきたが、年齢層や人種、文化的背景によって性格・気質の健康影響は大きく異なりうるため、それらの研究がそのまま日本人にはあてはめて良いかは疑問の余地があった。また、一般人高齢者を対象としたそういった研究は、世界手もほぼなかったことから、今回、研究グループは日本人高齢者におけるType D気質の心理的・身体的健康影響についての検証を行ったという。
具体的には、2010年8月に岡山県内の3市町に居住する65歳以上の全人口を対象として調査票を郵送し、回収された13,929名を分析した。自記式の調査票を用いた調査票ながら、答えがなかった質問項目を、統計学的手法である多重補完法を用いてサブ解析したところ、Type D気質を有する割合は46.3%と先行研究に比べて高いことが判明したという。
また、年齢やアルコール、喫煙、肥満、教育歴、社会経済的地位、同居人数を統計学的に調整し解析した結果、Type D気質を有する男女ともに心理的苦痛を感じるリスクは4~5倍、自分で不健康だと感じるリスクが2倍高いことが示されたという。特に、65~74歳の人達が、75歳以上の人達に比べてよりリスクが高くなることが示唆されたほか、65-74歳ではType D気質を有する場合、気分障害などの精神的疾患に関する重篤な心理的苦痛へのリスクは9.92倍(調整後)と高くなり、より注意が必要ということが示唆されたとしている。
今回の調査結果を受けて研究グループでは、先進国における高齢化問題に対し、どのように社会的なサポートをしていくかを考慮するためには、より効率的な資源の投入が求まれており、病気にかからないようにする予防的なサポートも重要だが、まずはどのような人たちのリスクが高いかを知ることが有用であり、こうした研究を進めていくことが、今後の効果的な社会的サポートの提供を検討する上で重要になるものと考えられるとコメントしている。