Infineon Technologiesは、次世代のメモリ容量とデータ速度を有する電子パスポート(ePassport)向けセキュリティコントローラ「SLE78」を発表した。

同製品は、Integrity Guard技術を搭載。今後、電子パスポートでは、ビザや出入国スタンプの電子データを、個人および生体情報データと同様に安全に格納する必要があるため、メモリ容量を3倍以上拡大させた。また、データ量の増加にかかわらず入国管理時のセキュリティチェックの効率を可能な限り高めるため、非接触通信による読み取り速度を8倍に高めている。パスポート内のデータは空港の電子パスポート用のチェックポイントに置かれた非接触通信の読み取り装置を使い、平均1秒未満で読み取ることができる。

さらに、次世代の電子パスポートにとって理想的なソリューションであるICAO(International Civil Aviation Organization) LDS 2.0規格に基づくためには、大量のデータ格納が求められる。このため、セキュリティコントローラに対するメモリ容量と処理速度の要求は劇的に高まってきている。そこで今回、SOLID FLASH技術を採用した。新しい標準と微細化技術を駆使して、プログラムコードに必要な約200Kバイトに加え、可変データ用としてFlashメモリベースの最大500KBの合計700KBのメモリ容量を実現した。これにより、カード保有者の個人および生体情報データの他、多数の電子ビザ、数百回の出入国スタンプおよびフリークエントフライヤープログラムのロイヤリティポイントも格納することができる。一方、マスクROMベースの他ソリューションの容量は、144KBに過ぎず、その大部分が国籍、発行日などのパスポート用データに使用されるため、次世代の電子パスポートに要求される項目を格納しようとしてもすぐにその限界に達してしまう。

加えて、同製品では入国管理ゲートにおいて、大量のデータを可能な限り迅速に処理するため、ISO/IEC 14443に基づく、6.8Mbpsの通信速度を持つVHBR(Very-High-Bit-Rate)プロトコルを採用している。このVHBRプロトコルは電子パスポートと対応する読み取り装置間の非接触通信の安定性も高められる。

この他、電子IDドキュメントに対して高まり続けるセキュリティ基準に応えるため、Integrity Guardでは、データを完全に暗号化された形で格納するだけでなく、内蔵する2つのCPUが相互監視を行いながら暗号化された状態で処理が行われるという。

なお、同製品は、次世代の非接触通信へとスムーズに移行できるよう、非接触通信インタフェースを備えたバージョンと、接触と非接触の両方のインタフェースを備えたバージョン(SLE78CLFX500VPH)の2つが用意されている。