続いてFaradayによる半導体SoC(System on a Chip)設計の事例を紹介した。従来のRTLシミュレーションをSimulinkのシミュレーションに変えることで、シミュレーションの速度を200倍に高速化したという。さらにハードウエア記述言語(HDL)のコードを自動生成し、設計を最適化することで、SoCのスループットを15%高め、論理ゲート数を57%削減した。
半導体SoC設計における検証シミュレーションを高速化。FaradayによるNAND型フラッシュメモリコントローラの設計事例。詳しい内容をこちらで閲覧できる |
自動化で重要な機能に、プログラムコードの自動生成がある。講演では、HDLコードの自動生成ツール「HDL Coder」と、C言語コードの自動生成ツール「Embedded Coder」の応用事例を挙げていた。前者はFLIR SystemsのFPGA設計(フィルタ設計)に使われた。後者はEurocopter製ヘリコプターの空調システム制御ソフトウェア開発に使われた。
フィルタのFPGA設計にコード自動生成ツール「HDL Coder」を利用。フィルタ適用前の画像(上)と適用後の画像(下)。なおこの事例の詳しい内容をこちらで閲覧できる |
ヘリコプター「Eurocopter EC130」の空調システム制御ソフトウェア開発に「Embedded Coder」を利用。航空機器用の安全基準を満足している。詳しい内容はこちらで閲覧できる |
それから、半導体設計における検証モデルの自動生成に応用した事例と、制御システム設計におけるテストの自動生成に応用した事例を紹介していた。前者はWolfson MicroelectronicsのディジタルオーディオハブICの設計に、後者はTRW Automotiveの電動駐車ブレーキ制御システムの設計に使われた。
MicroelectronicsがディジタルオーディオハブIC「WM8995」の設計で検証モデルの自動生成に「HDL Coder」を利用。詳しい内容をこちらで閲覧できる |
TRW Automotiveが電動駐車ブレーキ制御システムのテスト自動生成に「Simulink Design Verifier」を利用。詳しい内容をで閲覧できる |
「Simulink Design Verifier」によるテスト実行例。ゼロ除算エラーとオーバーフローエラーを検出した |
ここで複雑性に対処するための3つのキーワード「コラボレーション」と「モデリングとシミュレーション」、「自動化」し、ユーザー事例をビデオで紹介した。
最初は、自動車エレクトロニクス機器の開発にLearがMATLAB/Simulinkを利用している事例である。米国とアジアの異なる地域に存在するLearの技術者チームが共通の開発環境であるMATLAB/Simulinkを使用することで、コラボレーションした。
例えば金曜日に米国で顧客の要求があった場合、まず米国の技術者チームが要求に応じた設計を実施し、インドの技術者チームに成果物を渡す。インドの技術者チームは米国とは時差があるので、成果物を受容した時点でも金曜日の勤務時間が十分に残っている。それからインドの技術者チームがテストを実施し、成果物を完成させて米国に送り返す。この結果、翌週月曜日の朝までには顧客に要求に応じた設計変更が完了している。
また通常は開発に2年~3年かかる自動車用エレクトロニクス機器を、LearではMATLAB/Simulinkの活用によって約100日に開発期間を短縮できたという。
複雑性に対処するための、3つのキーワード。「コラボレーション」、「モデリングとシミュレーション」、「自動化」 |
Learが米国とインドでMATLAB/Simulinkを活用して顧客の要求に素早く応えた事例。上映されたビデオの一部を撮影したもの。なお全体のビデオはこちらで閲覧できる |
LearがMATLAB/Simulinkを活用して自動車エレクトロニクス機器の開発期間を約100日に縮めた事例。上映されたビデオの一部を撮影したもの。なお全体のビデオはこちらで閲覧できる |
次は、人工衛星の制御システム開発にOHBのフランスとドイツの技術者チームとデンマークの大学が共同でMATLAB/Simulinkを利用した事例である。高度725kmで2個の人工衛星が編隊を組んで安定に飛行するための、高度な制御が必要となった。MATLAB/Simulinkを活用することで、ソフトウェアの開発期間を手作業の半分に減らせたという。
高度725kmで2個の人工衛星が編隊を組んで飛行する。人工衛星の制御ソフトウェアの開発にMATLAB/Simulinkを活用することで、開発期間を半分に短縮した。なお全体のビデオはこちらで閲覧できる |
最後には「複雑性を受け容れるために」MATLAB EXPO(すなわち本イベント)を活用して欲しいとのメッセージを送って、Barnard氏の講演を締めくくった。