NECは11月7日、セーフティ事業をグローバルで展開するための新体系「Safer Cities」を確立し、7つの事業領域で世界共通のソリューションの販売を開始した。
7つの事業領域とは「国民ID・出入国管理」、「犯罪対策」、「重要施設監視」、「防災・救急」、「行政サービス」、「サイバーセキュリティ」、「省庁間連携」で、同日よりグローバル500名体制でソリューションの提供を開始する。
「国民ID・出入国管理」では、日本、米国をはじめ諸外国で広く利用され指紋照合・顔照合のほか、バイオメトリクス照合技術をコアに、国民IDシステム、選挙ID管理システム、出入国管理システム、e-Passport/e-visaシステムなどのソリューションを提供する。
「犯罪対策」では、バイオメトリクス照合技術を中心に、監視カメラ映像によるブラックリストの人物検知など、指紋照合ソリューション、犯罪捜査支援システム、ポータブルDNA解析装置顔照合ソリューション、電波監視システム、ナンバー検知システム、サイバー 犯罪対応ソリューションなど、未然に犯罪を防ぎ、治安維持を支援するソリューションを提供。
「重要施設監視」では、空港、港湾、発電所、ガス施設、プラント、浄水場、スタジアムなど被害が社会生活に大きなインパクトを与える重要施設において、犯罪脅威の発生を未然に防ぐエリア監視及び警戒警備のためのソリューションを提供。例としては、高機能センシングシステム(超高感度カメラ、赤外線センサ、水中センサ他)、映像監視ソリューション(不審行動検知、群衆監視、車両検知)、入退管理システム、プラント監視システム、鉄道映像監視システムなどがある。
「防災・救急」では、地震、津波、洪水、火事、台風など自然の脅威に対し、脅威の出現を事前に把握し災害の発生を未然に防ぐとともに、災害発生時の被害を最小限に押さえ、平常の状態に復旧させるためのソリューションを提供する。例としては、災害監視ソリューション(地震・津波観測システム、災害監視衛星システム)防災情報システム、広域防災ネットワーク、救急クラウドシステムなどがある。
「行政サービス」では、IT/NW技術を活用して、感染症の予防や就労管理など公共の安全・安心につながる行政サービスを支えるソリューションを提供。例としては、外国人労働者就業ビザ管理システム、電子政府システム、医療情報ソリューションなどがある。
「サイバーセキュリティ」では、ハッキングやサイバー攻撃などひとたび攻撃を受けると人々の生活に大きな影響を与える情報化社会において、サイバー空間の安全(Cyber Security)を実現するソリューションを提供する。例としては、内部インシデント可視化ソリューション、サイバー攻撃監視・分析ソリューション、サイバー攻撃対応演習、サイバーセキュリティコンサルテーションなどだ。
そして、 「省庁間連携」では、自治体や省庁、関係機関など、様々な組織間の情報を共有するためのネットワークインフラや、情報の共有によって得られるビッグデータから有用な情報を抽出、提示するデータ分析、可視化ソリューションを提供。高機能センサシステム、ビッグデータ解析システム、可視化ソリューションなどが例としてある。
NEC 執行役員 近藤邦夫氏は、「われわれのまわりで、安心安全のリスクが高まっている。市場も成長分野であり、NECがICTで貢献できる分野でもある。NECは、安全・安心な社会を支える高機能・高性能なセンシング、ビッグデータによる予知・予兆分析、ネットワーク、バイオメトリクス照合などの技術を万遍なく持っており、これが特徴であり、強みでもある」と、この市場に注力する背景を説明した。
同社では、この事業を推進するにあたり、2013年4月にシンガポールに「グローバルセーフティ事業部(GSD)」を設置し、現地主導型でセーフティ事業を推進していく。
近藤氏は海外に事業部を置く理由を「日本人が現地に行って事業を行うのでは急速な事業拡大は難しい。今回は、本社以外ではじめて海外に事業部を置く。シンガポールは世界からいろんな人が集まり、議論されクリエイトされている。ここで、世界に必要なセーフティソリューションを作り出していく。世界で必要なものを提供していくためには、世界視点にする必要がある。海外で必要されてソリューションは、日本とプロセスが違う。海外には海外にあったやり方がある。それが海外に移転した理由だ」と説明した。
また同社では、「One to Many」のビジネスモデルにより、世界共通のソリューションとしてグローバル展開を図る。近藤氏は「One to Many」のメリットとして、スピード、コスト、品質、デリバリーのしやすさの4つを挙げた。同社は今後、他の事業でも、「One to Many」を推進する予定だ。
日本の顧客に対しても世界標準のソリューションを提供していくのかという質問に対して同氏は、「日本で世界標準を受けて入れてもらうのは現状では難しい。当面、別々に考えていく」と述べた。
同社では、2013年度約300億円であるセーフティ事業を、2017年に1,000億円まで拡大したい考えだ。
近藤氏は1,000億円という金額について、「オーガニックグロースだけではまかなえない。地域によっては、足りないソリューションもある」と述べ、場合によっては企業買収もありうるとの認識を示した。