九州工業大学(九工大)10月31日は、ウシオ電機と共同で、色素増感太陽電池に円筒型セル構造を採用し、完全封止に成功したと発表した。

成果は、同大大学院 生命体工学研究科の早瀬修二教授らによるもの。

色素増感太陽電池は、酸化物半導体と有機色素で構成される有機系太陽電池で、現時点でのエネルギー変換効率の最高値は11.9%(標準太陽光基準)となっている。常圧、塗布で作製できるため、低コストプロセスで作製できる太陽電池として注目されてきた。色素増感太陽電池の作製する中で、最も難しくコストがかかるのが封止プロセスである。外部から酸素や水分が浸透してくると性能が低下するため、それらの侵入を完全に遮断する必要がある。しかし、従来の樹脂を用いた封止では、それらの浸透を完全に止めることは困難であり、安価で完全に封止する方法が求められていた。

これまで、研究グループでは、高価な透明導電膜基板を必要としない太陽電池の開発を進めてきた。透明導電膜の代わりに金属浮遊電極を用いると、フレキシブルな金属浮遊電極を使うことができるため、様々な形状の太陽電池を作ることが可能になる。この中で、円筒型の太陽電池も作製できることをすでに実証している。従来の透明導電膜基板を使うプロセスでは作りにくい形状だが、フレキシブルな金属電極を使うことにより、比較的容易に作製できるようになった。一方、ウシオ電機はランプをはじめとした円筒型ガラスの封止に優れた技術を持っていた。そこで今回、円筒型太陽電池作製技術とウシオ電機の円筒型ガラス封止技術を融合させ、容易に完全に封止できる円筒形太陽電池を作製することに成功した。

試作した円筒型色素増感太陽電池セル(直径1.5×長さ20cm)

円筒型色素増感太陽電池の構造

特徴としては、円筒型のため、色々な方向から光を集めることができ一日の総発電量が多くなる。水平、垂直に設置できるので、設置面積を少なくすることができる。ランプが並んだような太陽電池モジュールのため、風圧を受けにくく、安定した設置が可能。ランプと同じように設置できるためメンテナンスが容易。光を通しながら発電できるといったことが挙げられる。

今後は、これらの特徴を生かして、土地単価が高く少ない設置面積が必要とされる集約農業用用途、植物育成のための透光性と発電を両立できる農業用途など、平面型太陽電池では設置が難しい応用用途への展開を目指すとコメントしている。

実験農場のアグリセンサシステム