産業技術総合研究所(産総研)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、SIJテクノロジ、イオックス、日本特殊陶業、大阪市立工業研究所は10月28日、インクジェット方式による銅配線で線幅3μmの超微細配線形成技術を開発したと発表した。
スマートフォンなどの電子機器に用いられるLSIでは高性能化が進んでいる。このようなLSIの製造では、ICチップの小型化と端子数の増加により、従来のICパッケージ用配線に用いられているフォトリソグラフィ方式は、微細化への対応において限界を迎えている。今回の超微細インクジェット技術は、従来のフォトリソグラフィ装置では実現が難しいマイクロメートルオーダーの配線パターン形成が可能なのに加え、フォトリソグラフィ方式で発生する有機廃液やエッチング液廃液を削減できることから、環境にもやさしい技術となっている。
今回の成果は大きく3つ。1つ目はナノ粒子製造技術により、インクジェットの吐出性に優れた銅ナノ粒子インクを開発したこと、2つ目は超微細インクジェット技術により、デジタルデータに基づき配線幅3μmの銅配線を直接描画したこと、3つ目は極低酸素還元技術を進化させ、銅の配線抵抗率4μΩ・cmを達成したことである。
まず、ICパッケージ基板に求められる信頼性を確保するために、インクと基板との十分な密着力を実現しつつ、インクジェット方式に適合する銅ナノ粒子インクを開発した。また、同インクを用い、インクジェット適合性評価や吐出条件の最適化などにより、超微細インクジェット技術で線幅3μm、ピッチ6μmのラインをエポキシ基板上に直接形成することに成功した。同手法では、版を作ることなく、PC上のデジタルデータのみに基づいて、微細配線が形成できる。銅インクで必須となる還元焼成については、極低酸素還元技術を進化させた新プロセスの開発に成功し、配線の抵抗率を4μΩ・cmまで低減させた。
今回、研究グループでは、各要素技術の有効性、実用化に向けた問題点の洗い出しおよび方向性の検証を行った。今後は、得られた成果を基に、実用化に向けた開発フェーズに移行し、製品化を目指す。また、次世代ICパッケージ基板だけでなく、スマートフォンをはじめとする小型情報通信端末向けの超小型プリント基板、ICタグなどのRFID用アンテナなどにも展開していく予定とコメントしている。