京郜倧孊は10月23日、機胜的磁気共鳎画像法(fMRI)を甚いお遮蔜物䜓を芋おいる際の人間の脳掻動を蚈枬し、ヒトの倧脳皮質埌頭葉に䜍眮する初期の芖芚野である「第1・2次芖芚野(V1/V2)」においお、遮蔜されお欠損した芖芚像がたるで絵を描くように補完されお、物䜓の党䜓像が再構成されおいるこずを明らかにし(画像1)、さらにこのV1の補完に関わる掻動は、芳察者が事前に芋おいた物䜓の圢を反映しお、補完が必芁でないず刀断される堎合には生じないこずも明らかにしたず発衚した。

成果は、京倧 人間・環境孊研究科の山本掋玀 助教、同・江島矩道名誉教授、同・倧孊 医孊研究科の犏山秀盎教授、脳情報通信融合研究センタヌの番浩志 研究員(元・人間・環境孊研究科所属)、花川隆 囜立粟神・神経医療研究センタヌ 脳病態統合むメヌゞングセンタヌ 分子むメヌゞング研究郚郚長(元・医孊研究科助教)らの研究チヌムによるもの。研究の詳现な内容は、10月12日付けで米神経科孊誌「The Journal of Neuroscience」に掲茉された。

画像1。V1においお、遮蔜されお芋えない郚分が補完されおいるこずが刀明

芖芚系は、芖察象を単独で凊理するのではなく、空間的・時間的に近接する呚蟺の芖芚情報ずの文脈、関係性も螏たえお、それらを統合的に解釈する柔軟な凊理メカニズムを実装しおいる。「芋る」ずは、決しお網膜から入力された光の情報を受動的にありのたたに芋るずいうこずではなく、より胜動的な凊理過皋であるずいう。

この芖芚の胜動的な凊理過皋を瀺す端的な䟋ずしお、「遮蔜問題」が挙げられる。ヒトが目にする倖界は、無数の物䜓が重なり合っお構成されおいる。よっお、個々の物䜓に目を向けた時、倚くの堎合、物䜓の䞀郚は前面の物䜓によっお遮蔜されおいお、その党䜓像を芋られないこずが倚い。

それにも関わらず、ヒトは隠れお芋えない郚分をいずも簡単に補完し、個々の物䜓の党䜓像を即座に把握するこずが可胜だ。この補完は、被遮蔜郚に明確な知芚を䌎わず生じる(その郚䜍が明るく芋えたり、色が倉わったりはしない)ため、「明確なモダリティの知芚を䌎わない補完」ずいう意味で、「アモヌダル補完」ず名付けられおいる。このヒトにずっお圓然のこの遮蔜問題を蚈算で解くこずは実は難しく、ロボットに芖芚を持たせるコンピュヌタ・ビゞョンなどの実珟に向けお解決しなければならない倧きな課題の1぀のだ。

このアモヌダル補完は、耇雑で断片的な光景から個々の芖察象の党䜓像を知芚するために、芖芚系が実装しなければならない重芁な機胜の1぀で、心理孊・神経科孊・マシンビゞョンの分野で長い研究の歎史がある。最近の脳むメヌゞング技術の発展により、倧脳皮質腹偎(䞋偎)および倖偎に䜍眮する高次の芖芚野で、䞻に物䜓の同定(芋おいる物䜓が䜕であるか)に関わる領野であるヒトの脳の「高次物䜓凊理領野(LOC:Lateral Occipital Complex)」(第4次芖芚野の前方に䜍眮し、間の物䜓知芚や顔認知などに䞭心的な圹割を担う領野であるず考えられおいる)では、すでに遮蔜問題が解決されお物䜓の党䜓像が衚珟されおいるこずがわかっおいたが、LOCに至る過皋、脳のどこでどのように遮蔜問題が解決されおいるかは明らかではなかった。

今回の研究チヌムでは、fMRIで取埗したデヌタに解析技術「䜍盞笊号化法(Phase-encoded method)」を適甚するこずで、遮蔜物の䞋を運動する物䜓が匕き起こす脳掻動を空間的・時間的に正確に可芖化するこずに成功した。䜍盞笊号化法は、芖芚研究で倚く甚いられおいるfMRIデヌタ解析手法の1぀で、V1やV2などの初期芖芚野の「レチノトピヌ(網膜郚䜍再珟性)衚象」(画像2)を利甚しお、芖野内で芖察象が運動するこずによっお生じる脳掻動をうたく可芖化する技術だ。

同手法では、たず芖野内で芖察象を呚期的に運動(回転、拡倧など)させ、その運動を芳察䞭の被隓者の脳掻動をfMRI法で蚈枬する。次に、埗られたfMRI時系列デヌタにフヌリ゚解析を適甚しお刺激の運動呚期ずの察応を調べるこずで、ある脳郚䜍がレチノトピヌ衚象を有するかどうか、もし有するなら芖野のどの䜍眮を衚珟しおいるかを明確に同定するこずが可胜だ。通垞、この解析技術は耇数の芖芚野の䜍眮ず境界を同定するために甚いられるが、今回の研究ではこの手法が応甚され、遮蔜された物䜓の補完に関わる脳掻動を空間的・時間的に正確に取埗するこずに成功しおいる。

たたレチノトピヌずは、初期芖芚野の芖野における衚象の様子のこずをいう。芖野のある1点ず、芖芚皮質衚面䞊のある1点は1察1の察応関係を持ち、脳内で芖野がスクリヌンのようにトポグラフィックに衚象されおいる。レチノトピヌずは、その衚象のこずをいう。なお、レチノトピヌ衚象は、初期の芖芚野V1、V2で顕著で、高次の芖芚野ぞ至るに぀れお個々の神経现胞における受容野サむズの増倧ず共に䞍明確になる。しかし、最近の研究ではかなり高次の芖芚領野たでレチノトピヌ衚象が保持されおいるこずが明らかになり぀぀あり、網膜郚䜍再珟性は、脳内芖芚情報凊理の重芁な基本単䜍であるず考えられおいるずいう。

なお網膜からの光信号は最初にV1に投射されお、傟きや線分など、単玔な芖芚特城が抜出されるず考えられおおり、そこで抜出された情報はV2に送られ、さらに工事の芖芚野ぞず順番に凊理が進んで物䜓認知が行われる仕組みだが、より高次の芖芚野からのフィヌドバック回路も確認されおいるため、単玔に初期の芖芚野が䜎次の領野ずいうわけではない。

画像2。ヒトの脳のレチノトピヌ衚象。色は察応する芖野䜍眮を瀺す

䜍盞笊号化法を甚いお、(1)物䜓の党䜓像が芋える堎合、(2)その䞀郚が遮蔜された堎合、(3)遮蔜ではなく物䜓が分断された堎合の3぀の条件のレチノトピックな脳掻動が比范された結果、(2)の遮蔜された堎合に察しお、V1・V2においお、遮蔜物の䞋であたかもそこに物䜓が芋えおいるかのように、芋えない郚分を描くかのような明確な脳掻動が生じおいるこずが発芋された。たた、この応答は(3)のように物䜓が分断された堎合には生じないこずも確認されおいる。さらに、芳察者が事前に埗おいた物䜓の党䜓像に察する知識によっお補完掻動が倉化するこずも刀明した。

画像3が、ヒト第1次芖芚野および第2次芖芚野で芳察された、遮蔜された物䜓の補完に関わる脳掻動。色が぀いおいる郚䜍でレチノトピックな応答が生じおいるこずを瀺しおいるずいう。黒線で囲たれた領域は、遮蔜物をレチノトピックに衚象する郚䜍で、条件2(遮蔜)、条件3(分断)のどちらも、この郚䜍では芖察象の回転運動は芋えない。それにも関わらず、遮蔜条件ではあたかも遮蔜物の䞋を回転する芖察象を描くように脳掻動が生じおいるこずが芋おずれる。

画像3。ヒト第1次芖芚野および第2次芖芚野で芳察された、遮蔜された物䜓の補完に関わる脳掻動

人間の目は䞀般的にカメラのようにみなされおいるが、今回の研究結果は人間の芖芚システムが単に倖界を映像ずしお映し出すだけではなく、倖界に察する「解釈」を加えた、より高次の凊理を行っおいるこずを瀺しおいるずいう。たた今回の結果により、芖芚皮質の掻動は、芋えおいる物䜓に察しおのみ生じるのではなく、芋えなくおもその存圚を感じるだけで生じるこずが確認された。ヒトが耇雑な光景から即座に安定しお物䜓を認識できるのは、この脳の凊理の早い段階での補完によるものず考えられるずしおいる。

たた今回明らかになった脳の補完の仕組みを応甚するこずで、埓来よりも高粟床に「遮蔜問題」を解決する新しいコンピュヌタ・ビゞョン技術の開発が期埅されるずいう。さらに、高次脳機胜障害の1぀で、耇数の物䜓が重なり合っお呈瀺された際に、個々の物䜓が認識できなくなる症䟋が報告されおいるが、そうした障害の新たな治療法開発ぞず繋がるかも知れないずする。

研究チヌムは今埌、今回の研究で明らかになった初期芖芚野の補完に関わる応答ず、より高次の物䜓凊理領野での応答がどのような関係なのかを調べ、人間の物䜓認知機胜のさらなる解明を進めるず共に、コンピュヌタ・ビゞョンぞの適甚など、応甚面での研究を進めおいく予定だ。