浜松ホトニクス(浜ホト)は10月22日、臨床検査の超早期診断や多くの医療資源の中から個々人に対応した治療法を提供する個別化医療の実現に向け、試薬およびPOCT(ポイントオブケアテスティング:臨床現場即時検査)機器の開発に有用な、高感度な蛍光イムノアッセイリーダを新たに開発したと発表した。
イムノクロマト法は、血液検査などの検体検査に用いる、免疫反応を利用した検体中の微量な被検物質の検出・定量を行う生化学的手法の1つで、抗原は免疫反応を起こす物質で、抗体は抗原を認識して結合する働きを持つ。一般的な定性検査方法は、標識抗体を置いたメンブレン(膜)キット上に検体を滴下し、被検体が毛細管現象によって泳動する性質を利用し、途中に捕捉抗体を置き抗原抗体反応によって結合した被検物質を検出するというもので、インフルエンザや妊娠診断の分野では、抗原抗体反応による発色を目視で判定する簡易迅速な確定(定性)診断として用いられている。
また、目視判定が困難な低発色領域を含む定量診断に、吸光や蛍光を用いて被検物質を正確で迅速に定量化する、より高感度なイムノクロマト法が用いられており、特に蛍光法は、吸光法よりもダイナミックレンジが得られやすく、微量で濃度の薄い被検物質の定量化が可能であることから活用が進んでいる。
今回の開発品は、POCTなどで、より多くの診断項目に正確で迅速な診断を実現することを目指し、そうした蛍光法と独自の光検出技術を融合させたもので、蛍光強度の計測感度を同社従来製品(イムノクロマトリーダ)比で約1000倍とし、1.5μlの検体中の被検物質「C反応性タンパク(CRP)」を0.2μg/dlの微量濃度で計測することが可能。
また、一般的なメンブレンキットやマイクロチップなどの測定に対応しており、今後期待される高機能デバイスと組み合わせることも可能なほか、同開発品をもとにした納入先専用の機器・ユニットのOEM供給にも対応していく予定だという。
さらに同社では、同開発品を用いることで研究者自身がデータ解析することが可能になるため、イムノアッセイ研究分野で新しい試薬開発が期待されるほか、患者の近くで行うPOCT用の診断装置の開発に応用することで、心疾患や感染症、血栓症などの迅速性、緊急性を要求される医療現場での定量診断に有用性が発揮されることとなり、近い将来、高齢化に伴い増加が予測されるアルツハイマーなどの脳疾患、循環器系疾患、がん、アレルギーなど、さまざまな疾病に対応した超早期診断および個別化医療の実現が期待されるようになるとコメントしている。