カゴメは10月17日、同社が保有する乳酸菌「ラクトバチルス・ブレビス・KB290(ラブレ菌)」が、生体内のさまざまな防御メカニズムを活性化させることで、インフルエンザウイルス感染に対して防御効果を発揮することを動物試験で明らかにしたと発表した。

同成果は、同社 研究開発本部の脇尚子氏、矢嶋信浩氏、菅沼大行氏らとニュージーランドAgResearchの共同研究によるもの。詳細は「日本食品免疫学会第9回学術大会」にて発表された。

ラブレ菌は、ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田博士によって京漬物の「すぐき」から発見された免疫力を高める作用(免疫賦活作用)を持つ乳酸菌。免疫力を高めることでさまざまな感染症の予防が期待できるが、今回の研究では、ラブレ菌がインフルエンザウイルスに対して効果があるかどうかの調査が行われた。

具体的には、インフルエンザウイルス感染に対しラブレ菌がどのような影響を及ぼすかどうか、感染により引き起こされる症状を指標にして調査を実施。実験にはメスの試験用マウス(BALB/c、1群10匹)を用い、ラブレ菌粉末(摂取量:10億個/日)、ないしはラブレ菌を含まない粉末を14日間摂取させた後、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(H1N1)を感染させ、感染から7日目までの体重ならびに健康状態スコアの評価を行ったところ、感染による体重減少ならびに健康状態スコアの悪化はいずれも、ラブレ菌をあらかじめ摂取させたマウスにおいて、摂取させなかったマウスに比べて改善されていることを確認し、このことから、ラブレ菌には、インフルエンザウイルスに対する防御効果があるという結論を得たという。

Aはインフルエンザウイルス感染後の体重の推移。Bは健康状態の推移。▲はラブレ群(感染前にラブレ菌を2週間摂取)。●は対照群(感染前にラブレ菌を摂取せず)。平均値±標準誤差、n=10、*:p<0.05、**:p<0.01(対照群との比較)

この結果、ならびにこれまでの研究からラブレ菌がヒトのインターフェロン(IFN)-αの産生能や、がん細胞や感染細胞を殺す力である細胞傷害活性を高める作用をもつことが報告されていることを受け研究グループでは、IFN-αや細胞傷害活性が、ウイルスに対する重要な防御メカニズムであることから、ラブレ菌のインフルエンザウイルス感染に対する効果も、この2つのメカニズムを介している可能性があると考え、インフルエンザウイルス感染後3日目および7日目に、ラブレ菌をあらかじめ摂取したマウスと摂取しなかったマウスとで、IFN-α量ならびに細胞傷害活性に違いがあるのかを調べたほか、感染後7日目に、これら以外の重要な防御メカニズムであるウイルスに対する抗体の産生量の調査を実施したという。

インフルエンザウイルスに対する防御メカニズム

その結果、ラブレ菌をあらかじめ摂取したマウスの血中のIFN-α量ならびに脾臓の細胞傷害活性は、ラブレ菌を摂取しなかったマウスに比べて高くなったこと、ならびに肺におけるウイルスに対する抗体量の増加も確認され、これによりラブレ菌が、生体が備えている主な防御メカニズムであるIFN-αの産生、細胞傷害活性、ならびに抗体の産生を活性化することでインフルエンザウイルスに対して防御効果を示していることを突き止めるに至ったとする。

Aはインフルエンザウイルス感染後のIFN-α量に対するラブレ菌の影響。Bが細胞障害活性に対して、Cがウイルスに対する抗体量に対しての影響。平均値±標準誤差、n=10、*:p<0.05、**:p<0.01(対照群との比較)

なお研究グループは、今回の結果はあくまで動物試験で得られたものであり、実際にヒトがラブレ菌を摂取することでインフルエンザを予防できるか否かは今後の検討課題となるとコメントしている。