4回に渡って紹介してきた対談も、いよいよ最終回。今回は、誰もが身につまされる事例から始まり、そして将来に向けての展望について話が及んだ。そして、守りの情報システム部門から、攻めの情報システム部門へと、変わる為には何が必要か、その答えがいよいよ見えてきた。

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【座談会その1】情報システム部門が持つふたつの顔、コストセンターとプロフィットセンター
【座談会その2】ベンダー企業からユーザー企業へ、CIOの登場がビジネスを活性化する
【座談会その3】中小企業による、戦略的ITの利用事例:成長を見越した企業文化の形成

対談者

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員
阿部 満氏(写真真ん中)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 サイボウズ Office
プロダクトマネージャー 栗山 圭太氏(写真左)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 ダイレクトマーケティング部
マーケティングディレクター 佐藤 学氏(写真右)

人がいいからつけ込まれる。悲しき情報システム部

栗山氏:アンケートのコメントで、個人的に一番胸に響いたものが、データを消去してしまったというものなんですが、実は先日、サイボウズオフィスのユーザー会がありまして、そこに来たお客さんが「先日、バージョンアップに失敗してデータを飛ばしてしまいました」とおっしゃったんです。バックアップは一週間前のものしか残ってなかったらしく、その方は社内中から非難の嵐だったそうです。 でも、その人の所属は情報システム部じゃなくて経理部なんです。誰もやる人がいなくて、パソコンに詳しいからって頼まれて半ばボランティアとしてやったのにそこまで攻められて責任も負わなければならないなんて、あまりにもかわいそうだと。

佐藤氏:アンケートのコメントにもありますね。他部署からのいろいろ頼まれて大変だと。 各部門から上がってくる要求をすべて聞いているときりがありませんから、ある程度は断るようにしないと。

阿部氏:情報システム部の人って、断れないんですよ。人間的にも優しい人たちが多くて、「やってくれよ」と頼まれると「しょうがないな」みたいな感じで引き受けてしまう人が多いんです。

栗山氏:それはありますね。技術者特有の気質のような。でも、その一方で真逆な例もあるんです。 これもお客様の話ですが、そこは従業員数300人くらいのIT企業で、社員も若く現場のスキルもかなり高いんです。何か問題があった場合、情報システム部に頼むよりも自分でやってしまった方が早いから、現場で解決してしまう。勿論、何もかも勝手にやってしまってトラブルになってはいけないので最低限のルールはありますが、大抵のものは自分たちで解決してしまうそうです。おかげで情報システム部門がサポート業務に手を煩わされることがなくなり、完全に戦略部門として機能することができているとのことです。

阿部氏:それは、日本の中では先進的ないいモデルですね

企業が成長するためには、情報システム部門と、経営者の意識改革が必要

栗山氏:新しい産業の場合、ITとの関わりが深いケースが多いので、このような体制を取る事ができる土壌ができているようです。逆に、古くからある伝統的な企業の方が難しいかもしれません。

阿部氏:ただ、新しい産業でも古い産業でも、成長していく為にはITを戦略的に活用しなくてはならない、という点では同じです。むしろ、古い産業がITを活用したら、それは大きな話題になります。その為にも、これからの情報システム部門が変わる必要があります。そしてそれ以上に、経営者自身の意識も変わる必要があります。

佐藤氏:ITタブレットやスマートフォンが普及して、パソコンを知らない人でもITを利用できるようになりました。パソコンを置けなかった場所でもITが使えるようになります。明らかに、今はITによってビジネスの形が変わりつつあります。だからこそ、それを活かす仕組みを考えていかなくてはならない。

阿部氏:その通りです。 しかし、それを情報システム部だけで行う事は現実的に不可能です。実行するためには、会社全体として動かなければなりません。だからこそ、経営者の方の意識改革が必要なのです。 社長が悩んでいる経営課題、業務課題、それらを解決するためには戦略的案IT活用が絶対に必要です。今は、そんな時代です。 ITに関する理解を深めて、社内のリソースを上手く利用すれば、会社は良くなるんです。それを理解していただきたい。

栗山氏:グループウェアは、みんな難しくてコストが掛かると思っている方が多いのですが、今は非常に簡単で、かつコストもあまり掛からずにできます。例えば、前述した農業にセンサーを利用したシステムの場合は、準備期間は一か月です。在庫システムもだいたいそれくらい。短期間で、スピード感をもって、システムを構築することが可能となっています。 クラウドについて、セキュリティの面で不安に思っている方もいるかもしれませんが、現在ではかなり強固になっています。

阿部氏:ITを使えば、さまざまな情報が手に入ります。クラウドのように、簡単でコストの易いサービスや技術も次々と登場しています。以前と比べると、成功する確率は格段に高くなっています。

栗山氏:できるだけ多くの方に、最新のテクノロジーを知っていただきたい、そう考えています。今、新しいテクノロジーはクラウドの登場もふくめて、ユーザーを楽にする方向に向かっています。そこを知っていただきたい。最新のテクノロジーは、大企業だけが使うものではありません。むしろクラウドによって、中小企業の方が使いやすくなってきています。そのような事例を、今度のセミナーでは、多くの方にご覧頂く予定です。

阿部氏:情報システム部の位置づけは、どちらかと言えば、これまでは現在と過去の情報について引きずられる傾向が強くありました。私が情報システム部門の方に言いたい事は、既存のものに引きずられないで、システムを作るのであれば、ゼロベースで考えていただきたい。固定概念を捨てて、理想で構わないので、この会社の中で情報をどう束ねていけば良いものができあがるのかを考えてみてください。そして、是非それを社長に提案してみて頂きたいと思っています。堂々と、そして実践して欲しい。実践しないことを勉強するのは苦痛です。どうせ勉強するのなら是非とも実践して、そして成功していただきたい、そう思っています。

佐藤氏:ユーザー側だけでなく、我々ベンダー側も勉強しなければなりませんね。今はインターネットがあるので、お客様との情報格差は確実に狭まっています。その場を取り繕ってシステムを入れても、簡単にバレてしまいますから(笑)

栗山氏:最近では、ライブラリやフレームワークが沢山あるので、明らかにカスタマイズのハードルは下がっています。昔のような職人技は、今後どんどんいらなくなってくるかもしれません。

阿部氏:だからこそ開発に力を注ぐのではなく、どうプロフィットするかに頭を使う。そうすれば、経営者も評価してくれるようになります。正直なことを申し上げると、今回のセミナーには経営者の方にこそ来ていただきたいんです。戦略的にITを活用すれば、企業は間違いなく成長します。しかしその為には、経営者の理解が不可欠です。 情報システム部の皆さん、是非、経営者の方と一緒にお越し下さい。

2013年10月17日(木)に開催されるセミナーでは、具体的にどのようにすれば守りの情報システム部から攻めの情報システム部に変わる事ができるのか、更なる事例を紹介しながら解説していく予定だ。「情報システム部が変われば会社が変わる」阿部氏の、この言葉が胸に響いた方は、是非ともこのセミナーに参加してもらいたい。できることであれば、社長と一緒に。