東京大学とマツダ、広島電鉄、交通安全環境研究所は、広島市内で路面電車と自動車の間で実現する車車間通信型ASVサービスの公道実証実験を広島地区ITS公道実証実験連絡協議会の活動の一環として、実施すると発表した。

実証実験のイメージ

道路交通事故の大半は、市街地および交差点周辺で起きている。ドライバーの高齢化や交通インフラ投資節減への対応が望まれる中、交通事故をより効果的・効率的に防止するために、情報通信技術を駆使したITSと呼ばれるソフト技術で、個々のドライバーに直接的に危険回避行動を訴えかける安全運転支援情報を提供するサービスに期待が寄せられている。

国土交通省自動車局と自動車メーカーが推進してきたASVプロジェクトでは、衝突を未然に防ぐ予防安全技術のうち、自動車に各種センサを搭載して実現される自律型ASVサービスの開発が進められてきた。一方、通信型車載器を搭載して実現される車車間通信型ASVサービスはいまだ実用化に至っていない。課題として、相互の車両が専用の車車間通信型車載器を備えている必要がある点が挙げられている。

総務省は、安全用途ITS向けに700MHz帯域専用周波数(中心周波数760MHz、バンド幅10MHz)を割り当て、その有効活用が期待されている。東京大学 生産技術研究所附属先進モビリティ研究センター長の須田義大教授らは、公共交通車両に通信型車載器を優先的に配備することで車載器の普及とサービス浸透の課題を解決できると考えており、公共交通車両に同サービス対応車載器を先行的に配備することで、周辺を走行する自動車が通信型車載器を備えている場合に車両相互に安全運転支援メッセージを提供し合い、自動車への搭載が促されるとした普及シナリオ「公共交通車両-自動車間の通信型ASVサービス」を掲げた。今年春に700MHz帯周波数帯域の通信型車載器も市販化されたこともあり、提案サービスの実装を構想したという。

今回、研究グループでは、広島電鉄路面電車とマツダ実験車両との間で、自律検知型および車車間通信型を組み合わせたASVサービスの視察体験コースを広島市内に構築した。コースには、ブラインドコーナーや右左折などの見通し不良区間で、衝突防止の安全運転支援メッセージを相互に提供する一連のサービス体験を組み入れている。この路面電車-自動車型のASVサービスを、今年10月に東京ビッグサイトで開催される「第20回ITS世界会議東京2013」のポストコングレスツアー参加者を対象に、一般公開する予定という。

自律検知型センサが、数m~数十mというごく直近エリアをサポートするのに比べて、今回の車載無線機は通信距離が100m程度ある他、コーナーでも電波が回り込む回折性を特徴を持ち、大型車が後方から路面電車に接近する状況やブラインドコーナーから自動車が飛び出すような見通し不良状況での衝突防止という予防安全型の安全運転支援が期待できる。また、路面電車車両を新たにASVプロジェクトのメンバーに位置付け、通信型車載器を優先的に配備することで自動車への通信型車載器の装備誘因が期待できることから、インフラ投資を抑えた交通安全まちづくりも推進できるとコメントしている。

デモで体験できる自動車ドライバへの支援

デモで体験できる路面電車運転士への支援、およびデモ実施場所