森林を守るロボットたち
続いては、森林を創る(守る)ロボットシステム(森林ロボット)について(画像21)。早稲田大学はロボットの種類としては、遠隔操縦による伐採作業を実現する伐採ロボット、枝打ちロボット、作業介助用汎用移動機構などが、農業同様に農水省が力を入れて開発している。具体的な講演は、白井准教授にバトンタッチして行われた。講演のタイトルは、「自然化の伝統技能をマニピュレータで 天竜 tenryuと巽 tatsumi 実用化を目指して(農林水産省・実用技術開発事業)」である。
まず日本の林業についてだが、従事者は5万人しかおらず、実際のところ国有事業に等しい状況となっているという。また危険なことはいうまでもなく、現在でも、年に2000件の事故が発生し、さらには毎年40~50人の事故死者が出ている。つまり、おおよそ1週間から10日に1人、日本のどこかで林業従事者が亡くなるような事故が発生しているほど、死亡率の高い危険な仕事なのである。白井准教授は、その危険極まりない状況を解決したいという思いの下、林業ロボットを開発しているというわけである。
林業に関する前段階の作業の自動化も含めたロボット化に関する研究・開発は、実はあまり進んでいない。1970年代にリモコン(遠隔操縦)チェーンソーの研究が行われたが実用化には至らなかった。その後、チェーンソーのリモコン化や遠隔操縦などの研究は、少なくとも工学系の研究者では行われなくなってしまい、ロボット化という点では空白地帯となっているそうである(工学系以外の研究者も含めても、本当に限られた人しか、林業の機械に関する研究は行われていないという)。安全・安心がとても必要とされる業務であり、林業従事者数の増加や後継者問題からもロボット化は有効な手段の1つと思われるが、どうしたわけか農業以上に手つかずの状態となっているのが林業なのだ。