ロボット技術で日本の農林業が生まれ変わる!?

また、RT産業が自動車産業のようにきちんとなり立つためには、現在の大規模市場でのみ売れるというのではなくて、さまざまな中小規模市場があるわけで、それをシステムインテグレータが発掘して、それぞれにあったようなロボット、RTを開発するというスキーム、流れを造る必要があるという考えがあると語った(画像14)。そういうことから、中小規模市場でまずは産業に結びつくロボット、RTを研究開発し、それを普及させるプロセスを考えるべきだという。

画像14。RTの産業構造の理想

そうした中で、どうした分野が考えられるかというと、まず大枠として作業支援があり、その中で製造業、医療、生活(福祉など)、農林業がある。その4つを見ると、製造業はすでにFAロボットが多量に導入されており、今後、ドラスティックにこれ以上のロボットが導入されるというのはなかなか難しいとする。医療も前述したように臨床試験にまで到達するのが難しいといった問題があり、ダ・ヴィンチが大幅に先行しているというわけだ。生活(福祉)も前述したように、コスト的に難しい。そこで、農林業がクローズアップされてくるのだ。

農林業がどのような課題があるかというと、まず農業は日本としては自給率の低さが挙げられ、農業従事者の高齢化という問題もある。今後、持続的発展をするにはどうしたらいいのかということが大きな課題となっているというわけだ。そこで活用すべきなのがRTというわけで、RTを導入することで安全・安心、高作業能率化、低コスト化を実現できるという。

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 中央農業総合研究センターの「田植えロボット」(画像15・動画1)や、同じく農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター/前川製作所/早稲田大学で共同開発された「いちご収穫ロボット」(画像16)などの研究が進められているが、菅野教授は、ここでもう一押し先に行かないと、農林業でRTが活躍することは難しいとした。菅野教授は、今、大学や研究機関が力を入れるべきは、農林業だろうと考えているという。

画像15(左):田植えロボット。2008年の第3回今年のロボット大賞の審査委員特別賞を受賞した。画像16(右):開発に関わった前川製作所のスタッフがいちご収穫ロボット(3台目となるM型3号機)について解説を行った

田植えロボットの動画