現在放送中のテレビアニメ「幻影ヲ駆ケル太陽」は、完全オリジナルのアニメ作品。キャラクターデザインは、イラストレーター・漫画家のあかつきごもく氏が担当した。ここでは、あかつき氏と原案を担当した赤城晴康氏と田中秀典氏から、メインキャラクターのデザインに関して聞くと共に、当初は個人プロジェクトであったアニメ企画がテレビアニメ「幻影ヲ駆ケル太陽」となるまでのいきさつに迫った。

"変身しない"少女たちの物語

「幻影ヲ駆ケル太陽」のWebサイト

同作品はタロットを軸とした世界観で、22の血族から選ばれた少女たちが、自然の力を根源とする「エレメンタル・タロット」の使い手となって戦いに身を投じていくというストーリー。作中に登場する少女たちは、タロットを用いた戦闘時に見せる「テネブライモード」、そして通常の状態の「ルーメンモード」といったふたつのバージョンのデザインが用意されている。いわゆる「魔法少女もの」とは異なり、"変身後"もコスチュームはそのままで、髪型や顔つきなどで差異を出しているのが大きな特徴だ。

ここからは、あかつき氏が手がけたキャラクターの中でも、メインキャラの4名のキャラクターデザイン意図について紹介していきたい。

メインキャラ4名のデザイン意図を公開

キャラクターデザインを手がけたあかつきごもく氏

主人公の「太陽あかり」は、名字にある通り、「太陽」をイメージしたキャラクターで、用いるタロットも「太陽」のカード。髪の毛は炎をイメージしていて、髪が短い時は周囲を照らす"明るさ"を、髪が長い時は太陽フレア、激しい炎を表現している。メインキャラクターの衣装は、養成所に通っているという設定から学校の制服のような要素を含んでいるが、あかりに関しては制服という要素のほかにも「不思議の国のアリスを少しイメージ」しているとのこと。

太陽あかり

クールな性格の「星河せいら」は、「星」のタロットの使い手。変身後の「テネブライモード」では、頭と手から水晶が生えているかのようなキャラクターデザインが施されている。「星」をキーワードに、原案の赤城氏が出した「隕石」、「水晶」というアイデアをあかつき氏が絵に落とし込み、自分の体の一部が結晶化したようなビジュアルを採用。優等生をイメージした服装だが、「筋トレが趣味」という設定を反映して動きやすいショートパンツスタイルにしたという。

星河せいら

「節制」のタロットの使い手である白金ぎんかに関して、あかつき氏は当初、"大人しいしっかり者"のイメージで構想していたという。だが、田中氏があかつき氏に渡した資料の中にあった「何しとんじゃボケ」というセリフから大きく方向を転換。「このセリフを言ってもかわいいと思える子にしよう」と考えたあかつき氏が現在のデザインを完成させた。チューブトップにセーラー襟、素足にブーツという出で立ちは、ぎんかというキャラクターの性格を表した活動的なスタイル。あかつき氏いわく、一番の見所は「わき」とのことだ。

白金ぎんか

「月」のタロットの使い手で、優しげなお嬢様キャラクターの月詠るなは、性格が"癒やし系"というところから連想し、メインカラーを緑色に設定。先にデザインに着手していたキャラクター・「エティア」を青緑系のカラーリングにしていたことから、黄緑色を中心とした色を採用したという。変身後の「テネブライモード」では耳が生えて勇ましい顔つきになるが、これは変身前後のギャップを出しつつ、タロットの意味を踏襲したものだ。

月詠るな

あかつき氏が「特に難しかった」と語るネコのシュレディンガー(左)。カラスのラプラス(右)と共に、主人公たちが通うセフィロ・フィオーレ永瀧支部を監視している

登場人物が多いため性格やカラーなどで明確な違いをつけ、さらには変身後のデザインも考慮したキャラクターデザインとなっている同作だが、あかつき氏が「特に難しかった」と振り返っているのは、意外にもネコの「シュレディンガー」。猫は人によってイメージするかたちがまったく異なるので、今のバージョンとは異なるものをいくつも出して作っていったとのことだ。

次のページでは、原案を担当したアニマの赤城氏および田中氏に、当初は会社と無関係の個人プロジェクトだったこの作品が、テレビアニメとなったいきさつを語っていただいた。

(c)sole;viola/Progetto 幻影太陽