キリンビールに不思議な獣がデザインされていることは、キリンビールを一度でも飲んだことがある方なら知っていると思います。これは会社の名前にもなっている「麒麟」(きりん)です。この麒麟マークのデザインについてキリン株式会社 広報担当の山本武司さんに伺いました。いろいろ秘密があるようです。

1889(明治22年)年当時のラベル(左)と現在のラベル(右)

いつから「麒麟」が使われている!?

麒麟は中国の神話に登場する伝説の聖獣です。

――「麒麟」のマークが非常に印象的ですが、なぜ麒麟をラベルに使ったのでしょうか?

三菱財閥各社の要職を歴任した荘田平五郎氏による提案です。西洋のビールは狼や猫など動物を描いたラベルが多かったことから、荘田氏が「東洋の霊獣である麒麟を商標にしよう」と提案したようです。

――このマークはいつから使用されているのでしょうか?

1888年のキリンビール(現キリンラガービール)発売時からです。

――このマークをデザインしたのは誰なのでしょうか?

実際にデザインしたのが誰かは分かっていません。漆工芸家の六角紫水や、版画家・洋画家の山本鼎など諸説ありますが、いずれも確固たる根拠がない状況です。

麒麟の隠し文字はいつ始まったのか!?

もはや有名になってしまった話ですが、この麒麟の図案には「キ」、「リ」、「ン」の文字が隠されています。知らなかった人はぜひ探してみてください。

是非「キ」、「リ」、「ン」の文字を見つけてみてほしい

――マークには「キ」、「リ」、「ン」の文字が隠されていますが、それは、デザインされた当初からだったのでしょうか?

当初からではございませんでした。 

――最初はなかったんですね! いつから始められたのでしょうか?

偽造防止説やデザイナーの遊び心説などがあるのですが、残念ながらこちらも詳しくは判明していません。ただ、過去のラベルを調べていきますと、1933年のラベルには既に隠し文字が入っていたようです。また、実は「キ」、「リ」、「ン」の隠し文字の位置は時代ごとに異なっているんですよ。

――すると、少なくとも80年ぐらいは隠し文字があったということですね。麒麟のラベルマークは現在までに何度ぐらいデザインが変更されているのでしょうか?

細かな変更を含めますと二桁以上の回数になります。ですが、大きなデザイン変更は1889年の変更以来、基本的には変わっていません。ただし、戦時中の商標廃止時(1943年)や、商標復活時の物資不足による単色刷り(1949年)の例外はございます。

――戦時中は「麒麟」も苦労したんですね。

デザインの提案は歴史上の人物!

――このデザインにまつわるエピソードがあれば教えてください。

現在でも続く1889年のラベルデザインを提案したのが、長崎の観光地『グラバー邸』に名を残す商人T・B・グラバーでした。

――それはスゴイですね。歴史上の人物が提案者なんですね。

もしグラバー氏がいなければ(あるいは提案しなければ)ラベルのデザインは大きく変わっていたのではないでしょうか。

――ありがとうございました。

■麒麟マークのラベルデザインまとめ
・麒麟を商標に使うように提案した人:荘田平五郎
・ラベルデザインの提案をした人:T・B・グラバー
・実際にラベルのデザインを作った人:不明

というわけで、キリンビールの麒麟マークには長い歴史とそれにふさわしい来歴があることが分かりました。実際にデザインした人が誰なのか分からないのはちょっと残念ですね。

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(高橋モータース@dcp)