ルネサス エレクトロニクスは6月20日、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)向けに大容量RAMを内蔵したハイエンドマイコン「RZ/A1」シリーズ15品種を発表した。

ICT(情報通信技術)と半導体の進化により、家電、産業機器、ビル管理、電力網、自動車、交通など人々の生活に関わるあらゆるものがネットワークにつながり、クラウドと連携して生活を豊かにする「スマート社会」が実現しつつある。また、スマート社会と人間とのインタフェースではスマートフォンやタブレット端末の急速な普及により、身近な家電製品や産業機器においても高精細なディスプレイとタッチインタフェースの要求が急速に高まっている。

このような高度化したネットワークやHMI機能の実現には、マイコンでは達成困難な高性能、高機能化が必要であり、従来は組み込み用マイクロプロセッサとそのための外付けメモリ(DRAM)で、それらの機能を実現していた。しかし、この実現方法には、DRAMの動作周波数の向上に伴い、システムの設計難易度が上がってきていること、DRAMインタフェースの世代交代が早いため特に産業機器市場においては長期安定調達に不安があること、さらに実装面積や消費電力・輻射ノイズの増大、機器の高度化によるソフトウェア開発負荷の増大などの課題があった。

同製品の特徴は大きく2つ。1つは大容量RAM搭載によるDRAMレスソリューション。マイコンとしては世界最大となる10MBの大容量RAMを搭載した。この内蔵RAMにより、プログラム実行時の命令コードやグラフィックス処理などHMI用途に必要な大容量の画像データを内蔵メモリだけで処理可能なため、外付けDRAMが不要となる。DRAMの調達不安を解消するとともに、総チップ数減少による実装面積の低減、低消費電力化、輻射ノイズの低減、プリント基板コストの低減、DRAM用の電源供給が不要なことによる電源コストの低減などによりシステムコストを大幅に低減できる。さらに、内蔵RAMはLSI間の端子数によるバンド幅制約を受けないため、広帯域・短レイテンシでのメモリアクセスが可能となり、システム全体の性能を30%から50%向上できる。また、WXGA(1280×768画素)の画像表示を実現する。

もう1つは、ARM CPUとルネサス独自の周辺機能の組み合わせによるスケーラビリティの提供。今後、ますます高度化するネットワーク機能や高精細化が進むHMI機能の実現には、ハードウェア以上にソフトウェアとその開発環境の充実が重要になる。このため、同製品では、開発環境やソフトウェアのエコシステムがグローバルに広がっているARM CPUを採用するとともに、CPU以外の周辺機能についてはHMI用途で数多くの市場実績を持つ従来品「SH7260」シリーズを継承・強化している。これにより、システム開発において従来品で培った技術資産を活かすことができる。また、従来より同社のマイコンをサポートしていたツールベンダ各社との協業により、今まで以上に幅広く柔軟性に富んだ開発環境をユーザーに提供する。

さらに、業界初の試みとして、ルネサスとARMの共同開発により、「Cortex-M」用のリアルタイムOSであるCMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)-RTOS「RTX」を、スループット処理性能に優れる「Cortex-A」に実装。これにより、「Cortex-M」で開発したアプリケーションソフト資産の「Cortex-A」への移行が容易になり、リアルタイム性能が要求される分野に対応する性能スケーラビリティを提供することが可能となった。

なお同社では、「RL78」ファミリ、「RX」ファミリ、「RH850」ファミリといったマイコン製品群に今回の「RZ」ファミリを追加することで、スマート社会の実現に必要なソリューションとそれらを支えるマイコン製品のフルラインナップを提供していくとしており、今後も、ハイエンドからローエンドまで新製品の開発を進め、市場ニーズにタイムリーに対応させていく計画としている。「RZ/A1H」と「RZ/A1L」の10品種のサンプル出荷はすでに開始されている。

ルネサスの大容量RAM内蔵ハイエンドマイコン「RZ/A1」シリーズ