神戸大学は5月14日、医薬基盤研究所との共同研究により、「ヒトヘルペスウイルス6B(human herpesvirus-6B:HHV-6B)」が感染する際に必須の宿主であるヒトの受容体が、免疫細胞の1種のT細胞に発現している「CD134」であることを発見した発表した。

成果は、神戸大大学院 医学研究科 臨床ウイルス学分野の森康子教授、医薬基盤研究所の仲哲治プロジェクトリーダーらの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、5月14日付けで米国科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」電子版に掲載された。

HHV-6Bはヘルペスウイルス科に属し、ヒトにのみ感染するウイルスだ。生後6カ月から1歳ぐらいまでの乳幼児期に初感染し、感染した乳幼児は40度近い高熱を伴った「突発性発疹症」を発症する。ほとんどは治癒するが、時にはけいれんや脳炎、脳症を発症し、重篤な後遺症を残してしまうこともあるウイルスだ。

その後、HHV-6Bはヒトの体内に生涯にわたって潜伏する。つまり一度感染したら、通常の状態なら症状は出ないが、一生HHV-6Bとつきあうことになるというわけだ。しかし、通常の状態ではない時、つまり骨髄移植や臓器移植などを行って免疫抑制を行うなどした時にHHV-6Bは再活性化し、脳炎、脳症を引き起こす可能性が出てくるのである。

また、「薬剤過敏症症候群」においてもHHV-6Bは再活性化することから、同症候群の重篤化との関連性も重要視されているところだ。このように発症すると危険性のあるウイルスであり、しかも一度感染すると体内から追い出せないことからHHV-6Bはやっかいなウイルスだが、効果的な予防法や治療法は見つかっていない。そのためそれらの開発は急務となっている。

同大学では、これまでHHV-6Bのウイルス粒子に存在する特異的な糖タンパク質複合体の解析を精力的に行ってきた。この糖タンパク質複合体はウイルスの侵入時に宿主側の受容体に結合するという、感染初期に中心的な役割をする。ちなみにHHV-6Bがヒトの体内に感染する時に、先ずヒトの体の受容体を認識して侵入していくことは確認されていた。しかし、その特異的な受容体そのものに関しては明らかになっていなかったのである。

そうした中で研究チームは今回、T細胞に発現しているCD134がその受容体であることを解明。HHV-6Bのウイルス粒子にある糖タンパク質複合体が、宿主受容体であるCD134と結合し、ヒトの体内へと侵入することによってウイルス感染が成立することが明らかとなったのである。なおこのCD134は、「TNFレセプタースーパーファミリー」の1種で、刺激されたT細胞に多く発現しており、HHV-6Bも刺激されたT細胞で爆発的に増殖する仕組みを持つ。

なお、研究チームは今回の成果に対し、HHV-6Bが引き起こす病気の解明のみならずHHV-6Bに対する抗ウイルス剤や抗体の開発すなわち予防法や治療法の開発にも大きく貢献するものと考えられるとコメントしている。

ヒトヘルペスウイルス6Bの感染阻害のイメージ