大日本印刷(DNP)は4月23日、全方位カメラで撮影した風景や建物などの空間内を前後左右に思いのままに移動し、あたかもその場を歩いているような臨場感を体験できる映像システム「PERISCOPETM(ペリスコープ)」開発したことを発表した。
近年、CGを用いた仮想空間内を自由に歩行して楽しむことができる映像システムが登場しているが、CGの場合、建造物の構造やデザイン、道端の植物など、映像コンテンツのリアリティを高めていくほどにコストと時間がかかる反面、クオリティの低いCGでは鑑賞者を満足させることが困難という課題があった。また、現実の空間を撮影したパノラマ映像を使ったシステムの場合、撮影時のカメラの動きに制約されるため、鑑賞者は決められた空間内しか移動することができないという課題があった。こうした制約軽減のため、進行方向が分かれる交差点などでは、撮影した複数の風景を組み合わせることで、進行方向を選べるシステムもあるものの、完全に自由なウォークスルーが可能なわけではなく、また実際に歩行するような感覚も得られなかった。
そこで同社は今回、より滑らかで、リアリティの高い空間内を、鑑賞者が自由にウォークスルーできる映像システムとして開発したという。
同システムは、全方位カメラで撮影した映像データに、独自の映像編集・再生技術を活用することで、実写映像の空間内を自由にウォークスルーできるというもの。実写映像を利用することで高いリアリティを実現するとともに、ストレス無く臨場感あふれる仮想体験を楽しむことができるようになった。
また、鑑賞者は、仮想空間内の任意の場所から希望する方向に移動できるインタラクティブな操作が可能で、実際に進路を歩行し、分岐点で進みたい方向に曲がったり、好きな場所を見回したりできるなど、自由気ままに散策するような高い臨場感を得ることができるという。
さらに空間全体をアーカイブできるため、撮影された空間であれば、通常は立ち入れない場所、例えば閉館後や取り壊し後の施設、期間限定のイベント会場や取り壊してしまう社屋など、消失する空間を記録して、誰でも、いつでも訪れることができるようにすることが可能となるという。
なお、同社では今後、画質の高精細化とともに、空間内の特定地点をクリックして連動する動画や音声などのマルチメディアコンテンツを表示させる機能などの拡充を図り、2013年度中のサービス開始を目指すとするほか、サーバから配信できるシステムも開発し、家庭内のPCや携帯端末などからでも利用できるようにしていく予定としている。
「PERISCOPETM(ペリスコープ)」を用いて「ルーブル-DNP ミュージアムラボ」の会場の模様を再現した動画 |