山口大学の元木業人氏を中心とした研究グループは、国立天文台の電波干渉計「VERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)」および野辺山45m望遠鏡、オーストラリアのコンパクト電波干渉計「ATCA(Australia Telescope Compact Array)」を用いて行った観測から、大質量星形成領域「G353.273+0.641」のジェット構成を明らかにしたと発表した。

同詳細は英王立天文学会誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (MNRAS)」に掲載された。

同領域は、数百km/sの青方偏移のメーザー成分を示す天体で、これまで、なぜそうした青方偏移成分が見えるのかは、よく分かっていなかった。

今回、研究グループは観測によりジェットを起源とするSiOの分子輝線が検出され、かつ青方偏移成分に加えて、微弱な赤方偏移成分の検出に成功した。

G353.273+0.641のジェットの電波画像。観測周波数帯は左図が22GHz、右が18GHz。色の付いた点は検知された水メーザー・スポットで、赤は地球から遠ざかっている箇所(赤方偏移)、青が近づいている箇所(青方偏移)を示している

野辺山45m望遠鏡によって得られた幅1GHzのスペクトルの一部。内側のグラフはSiOの部分が拡大されている。赤と青の点線はそれぞれ最も大きい赤方偏移と青方偏移を示している

また、連続波での双方向に延びるジェットの撮像にも成功しており、これらの結果から、大きく青方偏移したメーザー成分はジェットの片側で、反対側の赤方偏移したメーザー成分は隠されて見えていない可能性が示されたと説明している。

G353.273+0.641のジェット周りを模式図に表した図。上側の黒い矢印が地球から見ている方向で、オレンジ色のDisk(降着円盤)中心から双方向にジェットが吹き出ている。上側のジェットは地球に近づいていくため青方偏移を示し、遠ざかる(赤方偏移となる)下側は原始星周辺の分厚いガス(円盤)に隠されてほとんど見ることができない