Texas Instruments(TI)は、車載用のeCall(緊急通報)システムに必要なすべてのアナログおよび組み込みプロセシング向けICを提供するリファレンスデザインを発表した。

eCallシステムを搭載した車両は、事故時に緊急サービスセンターとの間で自動的に通信を行う。このリファレンスソリューションは車載規格AEC-Q100の適合認定を取得済みのアナログICで構成されており、活用することで、eCallシステムの設計期間を短縮できる。

同リファレンスデザインには、高効率Class-Dモノラルオーディオアンプ「TPA3111D1-Q1」、ならびに無信号時電流が非常に低い1個の昇圧型コントローラおよび2個の同期整流降圧型コントローラ「TPS43330-Q1」を搭載しているほか、低い無信号時電流の電圧レギュレータ「TLV70033-Q1」および、低消費電力16ビットマイコン「MSP430F2232」も搭載しており、テレマティクス、盗難車両の追跡およびHEV/EV(ハイブリッド自動車/電気自動車)の走行音発生機能をはじめとした、その他の車載アプリケーション向けにもスケーラブル、堅牢、かつ低コストのソリューションを提供すると同社は説明する。

TPA3111D1-Q1は、8Ω負荷で10Wの出力提供し、その際の電力効率は90%を超える。また、音声信号の耐雑音性向上のためのEMI(電磁干渉)抑制を強化した。eCallシステムの緊急通報の音声をかき消す恐れのある外部騒音においても、大音量かつ明瞭なオーディオ品質を実現しているという。

また、プリブースト回路であるTPS43330-Q1は、バックアップバッテリーの電圧を昇圧、最小で2V入力までの動作を実現し、自動車のスタート/ストップ(アイドリングストップ)もサポート。8V~26Vと広い動作電圧範囲のClass-Dアンプと組み合わせることで、万一、事故で車両のバッテリーが切断された場合でも、単一セルのLiFePO4(リン酸鉄リチウムイオン)電池でリファレンスデザインを動作させることが可能だ。

同リファレンスデザインで示されている構成部品は、最大40Vの入力過渡波形に対して過電圧およびロードダンプ保護を提供。また、Class-Dアンプはパワーサイクリングおよび、初期通電時にスピーカー負荷のオープン検出をサポート。これらの機能は、過酷な車載環境での堅牢な動作を確保する他、故障解析を簡素化する。

なお、「TPA3111D1-Q1」はパッケージが28ピンHTSSOP。価格が1000個受注時で0.90ドル。評価モジュール「TPA3111D1-Q1」は1台149ドル。「TPS43330-Q1」はパッケージが38ピンHTSSOP。価格が1000個受注時で3ドル。評価モジュール「TPS43330-Q1」は1台99ドル。「TLV70033-Q1」はパッケージが5ピンSOT。価格が1000個受注時で0.15ドル。また、商用グレードの「MSP430F2232」は、パッケージが40ピンVQFNまたは38ピンTSSOPで供給される。