各賞の受賞概要と、日本チームの概要

速報でもお伝えしたが、改めて各賞を掲載すると、以下の通り。なお、日本のチームは各チームのウィキペディアのページにリンクを張ってある。

トップアワード(総合)

ベストWiki賞

ベストYouTube賞

  • 1st:東北大
  • 2nd:東工大
  • 3rd:Tech. U. Dresden

ベストプレゼンテーション賞

観客賞

  • 1st:東北大
  • 2nd:Tech. U. Dresden
  • 3rd:東大・駒場

分子ロボティクス研究会賞(特別賞)

  • 東工大
  • 東大・柏 (本来は1チームだが、タイということで2チームに送られた)

各チームの内容を簡単に説明すると、Team Sendaiの「Cell-Gate」は、細胞内に必要な分子だけを選別して取り込めるようにする人工的なゲートを設けるというもの。通常、細胞に穴を開けてしまえば中身が漏れてきてしまうわけだが、そうはならずに、でも外部から必要なものを取り込める仕組みとなっている(画像3)。

なお日本大会の時には、Team SendaiはAとBの2チームがあったが、内容を吟味した結果、1チームに統合して本大会に臨むことを選択した形だ。基本はBチームのコンセプトのままだが、Aチームのメンバーが培ってきたものも活かされているという。

そしてTITECH NANO JUGGLERSの「BIOMOLECULAR ROCKET」は、日本大会では優勝しており、本大会でも優秀な成績を収めた形だ。紫外線でコントロールできる分子サイズのロケットだ。モータータンパク質などより遙かに速く移動できるのが長所である(画像4)。

画像3。Team SendaiのCell-Gateの日本語プレゼンテーション画面のイメージCG。こうしたCGもすべてチームのメンバーが制作している

画像4。TITECH NANO JUGGLERSのBIOMOLECULAR ROCKETのプレゼンテーション画面

Team UT-Komabaの「DNA tablet」は、分子レベルのサイズのタブレットで、表示内容を2通りに自在に変化させられるというもの(画像5)。

Team UT-Kasei Runnersの「Autonomous DNA runner:a DNA-kinesin hybrid nano-robot」は、モータータンパク質を利用した体内の物質輸送システムだ(画像6)。

画像5。Team UT-KomabaのDNA tabletの動画から

画像6。Team UT-Kasei RunnersのAutonomous DNA runner:a DNA-kinesin hybrid nano-robotの日本語プレゼンテーション画面

このほか、東大・本郷のTeam UT-Hongoの「DNA SHELL」は、必要な分子を挟み込んでとらえることのできるクリップ的な分子レベルの貝(画像7)。

Team Kansai「Molecular NINJA Returns」は、未完成だった昨年のコンセプトを引き継いだ形だ。すでに実現している第0世代の分子ロボット「分子スパイダー」に、忍者が水蜘蛛を使って池の上をわたるようなイメージで移動させるというものである。

画像7。Team UT-HongoのDNA SHELL

なお、中間発表の日本大会は、各チームとも普通のプレゼンテーションだったが、本大会ではメンバー全員でかぶり物をして登場するなど、外国のチームがネクタイも締めて論文発表的な雰囲気で臨んだのに対し、日本チームはかなり場を湧かせていたのが特徴的だったという(画像8)。

画像8。会場のノリを変えた日本チーム。日本人というとマジメ、というイメージが強い気がするが、BIOMOD 2012では日本チームが場を湧かしていたようだ

それまで会場は硬い雰囲気だったのが、日本チームの登場で場の空気が明らかに変わるというノリだったようで、そこら辺が観客投票にも現れているのではないだろうか(海外の13チームの学生たちも投票するわけで、日本チームの学生だけが結託したとしても、本当に面白くなければ、1位を取るのは難しい)。

ちなみに、日本チームはプレゼンテーションでも高評価を得たが、6チーム共通した弱点だったのが、質疑応答だったという。要は、プレゼンテーションは英語であっても事前に原稿をしっかりとまとめることができれば、後は読み上げさえうまくできれば良いわけだが、質疑応答はある程度は事前の予想をしていても、どんな内容の質問をされるかわからないわけで、英語のヒアリング能力と、それをその場で判断して、やはり英語で解答するスピーチの能力が求められる。

しかも、はっきりと聞き取れるわかりやすい英語で質問してくれればまだしも、早口だったり、英語を話せても母国語ではないために聞き取りにくい発音の学生たちもいたりするわけで、そこに学術的な専門用語や表現なども含めるとなると、やはり求められるレベルが高いというわけだ。そこが、我々日本人には最も難しいところだろう。日本チームの来年以降の課題ということである。