京セラの100%子会社である京セラクリスタルデバイスは12月12日、原子拡散接合法を応用した水晶デバイスである温度特性フリーエタロンフィルタの開発に成功したと発表した。2013年1月よりサンプル出荷を開始する。
エタロンフィルタは、光通信の大容量伝送システムに必要不可欠な、電気信号を光信号に変換して発振する基幹部品の波長可変レーザモジュールにおいて、光波長が安定して発振されているか否かをモニタする部品。近年、光通信では、データの大容量化と高速伝送化が求められており、これらを実現する方法として、1本の光ファイバでより多くの光信号(情報量)が伝送できるWDM伝送システムの活用が主流となってきているが、WDM伝送システムの波長可変レーザモジュールは、中長距離から近距離まで伝送装置ごとに多数必要なため、さらなる小型化と省電力化が求められている。
同製品は、業界最高レベルとなる温度特性±0.15pm/℃ typ.を実現。正の温度特性を有する水晶と、負の温度特性を有する結晶を組み合わせる設計技術と高度な水晶加工技術に加え、原子拡散接合法を応用したことで実現した。また、小型ながらも、外気温度変化に対しての高い特性安定性を実現したことから、温度調節用のペルチェ素子などを不要にでき、波長可変レーザモジュールの小型化、低消費電力化を可能とする。
なお、原子拡散接合法は、東北大学の島津武仁教授が開発した直接接合技術であり、有機系接着剤を使用せずに、ウェハや基板を、無加熱・無加圧・無電圧で接合する技術。京セラクリスタルデバイスでは、島津教授の研究グループとの共同開発により、業界で初めて水晶デバイスに同手法を応用し、水晶ウェハを、数原子層から数十nmの薄い金属膜で、高強度に接合することに成功。これにより、従来の接合方法である、接合強度が弱いオプティカルコンタクトや、接合厚みの管理が困難な有機系接着剤による接合などの課題を解決したほか、エタロンフィルタの高精度、高信頼性かつ小型化を実現することに成功したとしている。