ソニーは11月21日、ブルーレイディスク技術を応用した細胞分析装置「フローサイトメーター」の第2弾として、独自の蛍光の波形形状を検出する「スペクトル解析機能」を新搭載した、スペクトル型セルアナライザー「SP6800」の発売を、2013年春より開始することを発表した。
フローサイトメーターは、特定の条件下で発光する蛍光試薬で細胞を染色し、レーザー光を当てた際に発する光を蛍光情報として検出することで、1秒間に数万個におよぶ各種細胞の大きさや個数、細胞表面や細胞内部の各種情報(構造、機能、バイオマーカーなど)を解析する装置で、細胞の解析のみ行う「セルアナライザー」と、細胞の解析および分取を行う「セルソーター」の2種類があり、大学や研究機関、製薬メーカーなどの研究室で、免疫やがんの研究分野や、iPS細胞(人工多機能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)などの幹細胞、再生医療の研究分野の分析装置として活用されているという。
一般的なセルアナライザーは、目的とする蛍光情報を検出するために、光学フィルターを使用して蛍光波長域(チャンネル)別に分割、抽出し、その蛍光の強さのみを測定しているが、この方式では、ある特定の蛍光波長域を抽出しても、同じチャンネル内に複数の蛍光色素の情報が重なりあった状態で検出されることとなり、補正作業が必要になる。そのため、解析の精度と再現性、作業スピードなどが課題となっていた。
同社が開発した「スペクトル解析機能」は、光学フィルターを使用せず、独自設計のプリズムで蛍光波長を各色に分離し、新開発した「32チャンネル光電子増倍管」を組み合わせて用いることで、蛍光の波形形状を高精度に測定することを可能とした。重複する蛍光色素の情報は、独自の解析アルゴリズムにより各色素に分離、その波形形状を解析できるため、従来方式では手間がかかっていた補正作業が不要となるほか、従来の光学フィルター方式では困難であった、蛍光波長のピークがよく似た蛍光試薬の分離も、同アルゴリズムにより高精度・高再現性かつ迅速に解析することが可能になった。同装置は、このスペクトル解析機能により、2本のレーザーで15色以上の多色解析を実現したという。
また、蛍光色素で染色していない細胞自体が自然に発光する微弱な蛍光情報(=自家蛍光)も、その波形全体の形状を高精度に検出できることから、無染色の細胞や、染色による刺激を嫌う種類の細胞の解析にも適しているという特長があるほか、これらの一連の測定はすべて全自動で行うため、作業の簡便化、迅速化を実現することができるという。
なお、同装置は2013年1月7日より予約受付を開始し、メーカー希望小売価格は2レーザーモデルで4095万円としている。