毎年この時期に発表されている、グッドデザイン大賞。今年度も11月23日~25日に開催される「グッドデザインエキシビション2012」で一般来場者からの投票を受け付けたのちに発表されることになっており、その注目度、期待度は日に日に高まっていることだろう。そこで、本企画では、発表に先駆け、各業界のクリエイターに最終候補として残っている15作品のなかから優れていると思う作品を独自に3つ選出してもらい、その選考理由とともに紹介していく。第3弾は、デジタルハリウッド学長・杉山知之が登場する。

杉山氏は今回の選考にあたり「グッドデザインとは、そのプロダクトの持つ性能と機能と造形が一体であると感じられるものだと、常日頃思ってきました。また、これまでのグッドデザインの延長にあるものではなく、何かしら革新的であるということも意識して選んでみました」とコメントしている。その結果選んだ作品3点は以下の通り。

サンダービート、ソニックビート、USG-400、ESG-400、TC-E400/オリンパスイメージング株式会社

見た瞬間、良い仕事をしますよ! と言われているように感じる。お医者さんたちにとっては、止血しながら切離ができるという夢のようなマシンである。技術も独自のものであり、他に類例がないとのこと。ハンドインストルメンツは、見るからに機能的な外観で使いやすそうだ。超音波・高周波エネルギージェネレータのGUIにも十分に配慮したとのこと。搭載カートも取り回しも良さそうなデザインで、各部に安全への配慮が伺える。21世紀の医療機器らしさを感じた。

ライン/NHN Japan 株式会社

これからの数年で、スマートフォンは世界中の人たちが日常的に持ち歩くものになるだろう。それに応えてネット環境はますます充実していくことになる。その近未来では、自分の友人たちのすべてが常にオンラインであるという環境で暮らすことなる。LINEは、まさにそのような世界で必要なコミュニケーションツールの原型を示してくれた。文字だけでなく、グラフィックを使ってのコミュニケーションも、デジタルであってもエモーションを伝えたいという気持ちにストレートに答えたものだと言える。革命的アプリだ!

木造仮設住宅群/(株)芳賀沼製作+(株)ダイテック+共力(株)+(株)グリーンライフ+(株)はりゅうウッドスタジオ+日本大学工学部浦部智義研究室+(株)難波和彦・界工作舎

第一印象、「ちょっと住んでみたい家だ」と思った。解決すべき多くの問題をデザインで解決してしまった好例だと思う。そもそもログハウスとすることで工期が短縮できる。これは仮設住宅では大事なことだ。ログハウスなので木材の再利用可能となり移設も可能だ。事実、最後は復興住宅に転用されるとのこと。また木材は地元のもので林業にも貢献している。木造ということで地元の大工さんで施工でき雇用も産んだ。そして、もちろん建築という観点からも機能的で美しいデザインだ。

なお、近年、グッドデザイン大賞を受賞した作品は、2011年度が本田技研工業の「カーナビゲーションシステムによる情報提供サービス」、2010年度がダイソンの「エアマルチプライアー」、2009年度がワークヴィジョンズ+岩見沢レンガプロジェクト事務局の「岩見沢複合駅舎」、2008年度がトヨタ自動車の乗用車「iQ」となっている。

デジタルハリウッド学長・杉山知之
1954年東京都生まれ。1979年に日本大学大学院理工学研究科修了後、日本大学理工学部助手に就任。1987年より、MIT メディア・ラボ客員研究員を務めたのち、国際メディア研究財団・主任研究員、日本大学短期大学部専任講師を経て、1994年10月、デジタルハリウッド設立。現在は、デジタルハリウッド学長とデジタルハリウッド大学学長を務める。