東北大学(東北大)は、Gal-9というタンパク質を持つ新しい免疫・炎症調節細胞(ThGal-9)を発見し、その細胞を刺激することにより免疫応答を調節する細胞群(Treg細胞やTh17細胞)を制御できることを示したほか、ThGal-9細胞はGal-9とともに免疫応答を抑える効果を持つIL-10タンパク質を産生することを解明し、Gal-9の投与により免疫・感染症疾患を制御できる可能性を提唱したことを発表した。

同成果は、同大災害科学国際研究所 災害医学研究部門 災害感染症学分野の服部俊夫教授、香川大学の平島光臣名誉教授、仁木敏朗助教らの研究グループによるもので、科学雑誌「PLoS ONE」に掲載された。

Therapeutic MOA of sGal-9 Administration

これまでも服部教授らのグループは新規の炎症・免疫調節因子であるgalectin-9(Gal-9:ガレクチン9)がHIV感染症で著増していることを報告、その意義についての研究を進めてきた。

同分野ではさまざまな感染症の血漿で測定が行われているが、研究により急性HIV感染症の感染初期のGal-9の上昇はCRPやserum amyloid Acid(SAA)などの現在診療に使われている炎症マーカーより早期に出現すると共に治療の効果をより良く反映することが判明、これにより感染症の早期診断に役立つことが示されたという。

急性HIV感染症患者の炎症マーカー

また、温暖化により世界中で増加している蚊媒介感染症のデング熱においてもGal-9が上昇していることが認められていることから、多彩な感染症で上昇するGal-9を臨床マーカーに用いることで災害時の感染症の早期発見に役立つ可能性が提案されたという。

すでに研究チームでは、サンラザロ病院およびハワイ大学と共同で、多色FACS解析によりGal-9産生細胞を同定することを開始しており、感染個体でGal-9を産生する細胞の特性を明らかにできれば、そのThGal-9細胞の機能とGal-9の産生制御が可能になり、感染に伴う過剰な免疫・炎症を抑えたり、感染症を迅速に検出したりできる可能性があるとしている。