生理学研究所(生理研)は11月8日、運動トレーニングを行った際に他人から褒められると、"上手"に運動技能を取得できることを科学的に証明したと発表した。
同成果は同研究所の定藤規弘 教授、菅原翔 大学院生(総合研究大学院大学)、名古屋工業大学の田中悟志氏 テニュア・トラック 准教授ならびに、東京大学先端科学技術研究センターの渡邊克巳准教授らによるもので、詳細は米国科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
これまで研究グループは、他人に褒められると金銭報酬を得たときと同じように脳の線条体が活発に働くことを解明していたが、今回は、48人の成人にトレーニングを行い、ある連続的な指の動かし方(30秒間のうちにキーボードのキーをある順番に出来るだけ早く叩く)を覚えてもらい、この指運動トレーニングをしてもらった直後に、被験者を3つのグループにわけ、「褒められ」実験を実施した。
この3つのグループは、「自分が評価者から褒められる」グループ、「他人が評価者から褒められるのを見る」グループ、「自分の成績だけをグラフで見る」グループで、自分が評価者から褒められたグループは、次の日に覚えたことを思いだして再度指を動かしてもらうときに、他のグループに比べて、より上手に指運動が出来ることが確認され、これにより運動トレーニングの直後に褒められることが、その後の運動技能の習得を促したことが示されたこととなった。
今回の研究では、キーボードをある順番で連続的に叩く指運動トレーニングを行い、その後、被験者を3つのグループにわけて"褒められ"実験を行った。そして、翌日に、覚えたことを披露してもらうテスト(キーボードをある順番に30秒間に何回叩けるか)を行って、その習熟度を比較した |
なお定藤教授は「"褒められる"ということは、脳にとっては金銭的報酬にも匹敵する社会的報酬であると言える。運動トレーニングをした後、この社会的報酬を得ることによって、運動技能の取得をより"上手"に促すことを科学的に証明できた今回の成果は"褒めて伸ばす"という標語に科学的妥当性を提示するもので、教育やリハビリテーションにおいて、より簡便で効果的な"褒め"の方略につながる可能性がある」とコメントしている。