浜松ホトニクスは10月31日、半導体製造技術により量産対応が可能で、従来品に比べ体積を約7分の1、質量を約9分の1と小型化した次世代光電子増倍管「μPMT」を、11月1日から国内外の分析・計測機器メーカー向けにサンプル出荷することを発表した。
光電子増倍管は、極微弱な光の粒(フォトン)まで検出することが可能な光センサで、物理や生物など最先端のサイエンスの分野で活用されている。通常の製品は、小型のもので直径1.5cm、長さ5cm程度の筒状の真空管で、ガラス管のなかに光電面と電子増倍部、陽極で構成しており、これまでは、増倍部を構成する数十点の部品を1本ずつ人の手で組立てていたために、量産対応や小型化が困難であった。
同製品は、シリコン基板を2枚のガラス基板で挟み込んだ、3つの部品で構成されたシンプルな3層構造を採用。シリコン基板をエッチングで900μmの加工を行い、従来の増倍部の電極配置と同様な構造を高い精度で形成することに成功した。性能も、従来の光電子増倍管と同じ真空管で同じ動作原理のため同等でありながら、半導体製品と同様のプロセス処理による製造方法を採用しているため、大量受注に対応が可能なほか、衝撃にも強くなったという。
また、可視域に感度を持つバイアルカリ光電面で、有効面1mm×3mm、量子効率26%(最高感度波長)、増倍率100万倍以上、13mm×10mm×2mm、質量0.5gのμPMTを内蔵したアッセンブリ品「H12400-00-01」も用意。μPMTに電圧分割(デバイダ)回路を組み合わせているため、駆動用高圧電源を接続することで動作する。また、μPMTは、カスタマからの機器設計の要望に応じて、組み込みに適した小型化、マルチチャンネル化など、形状のカスタマイズにも対応するという。
なお、同社では同製品の小型、軽量で衝撃に強いという特長を生かし、ポケットに入る高性能な携帯型分析機器などの開発が進むとの見方を示すほか、大病院などで行っていた検体検査が、開業医や救急車、さらには家庭でも可能になり、対処治療から疾病予防、心身の健康増進までが実現する可能性や水質・大気汚染の計測など環境分野などで、地域や個人レベルで有害物質などの同定が可能になることなども期待できるとしている。